日本国憲法と基本的人権 / 社会権
労働基本権(労働三権と労働三法)
要点整理
27条:勤労の権利と勤労条件の基準
日本国憲法27条1項は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と定めています。これを勤労の権利と呼び、生存権(25条)・教育を受ける権利(26条)と並ぶ社会権の一つです。27条2項は、賃金・就業時間・休息その他の勤労条件に関する基準を法律で定めることとしており、これを具体化したのが労働基準法です。27条3項は、児童を酷使してはならないと定めています。
28条と労働基本権(労働三権)
日本国憲法28条は、次のように定めています。
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
この28条が保障する権利をまとめて**労働基本権(労働三権)**と呼び、次の3つから構成されます。
- 団結権:労働者が労働組合を結成し、それに加入する権利。
- 団体交渉権:労働組合が、賃金や労働時間などの労働条件について、使用者(会社側)と対等な立場で交渉する権利。
- 団体行動権(争議権):交渉がまとまらないときに、ストライキなどの争議行為を行う権利。
労働者は、個人としては使用者に対して弱い立場に置かれがちであるため、労働三権によって労働者どうしが団結し、対等な立場で使用者と向き合えるようにすることが、この権利の目的です。
労働三法(労働三権とは別物)
労働基本権(労働三権)を具体的に保障し、実現するために定められているのが、次の3つの法律、労働三法です。
- 労働基準法:賃金、労働時間、休日、解雇の制限など、労働条件の最低基準を定めた法律。この基準を下回る労働契約は無効となる。
- 労働組合法:労働者が労働組合を結成し、団体交渉や争議行為を行う権利を具体的に保障する法律。不当労働行為(使用者による組合活動への不当な妨害など)の禁止も定める。
- 労働関係調整法:労働争議が起きたときに、斡旋・調停・仲裁などの方法で、労使間の対立を予防・解決するための手続きを定めた法律。
「労働三権」(団結権・団体交渉権・団体行動権という憲法上の権利)と、「労働三法」(労働基準法・労働組合法・労働関係調整法という法律)は、名前が似ていますが全く別のカテゴリーのものです。この2つを正確に区別できるかが、この単元で最も重要なポイントです。
| 労働三権 | 労働三法 | |
|---|---|---|
| 性質 | 憲法28条が保障する権利 | 労働者の権利を具体化する法律 |
| 内容 | 団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権) | 労働基準法・労働組合法・労働関係調整法 |
| 位置づけ | 憲法が直接保障する社会権の一つ | 労働三権などを具体的に実現するための法律 |
公務員の労働基本権の制限
労働三権は「勤労者」全般に保障されますが、公務員については、「全体の奉仕者」であることや職務の公共性を理由に、職種に応じて一部が制限されています。一般的に、公務員には団体行動権(争議権)が全面的に禁止されており、団体交渉権についても労働協約を締結する権利がないなど制限が加えられています。団結権については比較的広く認められていますが、警察官・消防職員・自衛官・海上保安庁の職員・刑事施設の職員などは、団結権も認められていません。
なぜテストで狙われるか
- 「労働三権」(団結権・団体交渉権・団体行動権)と「労働三法」(労働基準法・労働組合法・労働関係調整法)の名称と中身の対応関係を入れ替えるひっかけが非常に多く出ます。
- 労働三権を保障する条文が28条であること、勤労の権利が27条であることの条文番号の区別。
- 公務員の労働基本権が、職種に応じて制限の程度が異なる(全面的に権利がないわけではない)という点。
例題
例題1(基本)
問題
次の文の空欄に当てはまる語句を答えよ。
日本国憲法28条は、勤労者の(①)権、団体交渉権及び団体行動をする権利、すなわち(②)権を保障している。この3つの権利をあわせて労働基本権(労働三権)と呼ぶ。これらの権利を具体的に実現するために、労働条件の最低基準を定めた(③)法、労働組合の活動を保障する(④)法、労使間の争議を調整するための労働関係調整法が制定されている。
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①は労働組合の結成・加入に関する権利、②はストライキなどを行う権利、③④は労働三法のうち2つの法律名です。
答え:①団結 ②団体行動(争議) ③労働基準 ④労働組合
例題2(標準)
問題
労働基本権に関する記述として誤っているものを、次の①〜④のうちから1つ選べ。
① 団結権とは、労働者が労働組合を結成し、それに加入する権利のことである。 ② 労働三権は、日本国憲法28条によって保障されている。 ③ 労働基準法・労働組合法・労働関係調整法は、労働三権と呼ばれる憲法上の権利である。 ④ 公務員の労働基本権は、職種に応じて一部が制限されている。
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①は正しい記述です。団結権の定義のとおりです。 ②も正しい記述です。労働三権は28条で保障されています。 ③が誤りです。労働基準法・労働組合法・労働関係調整法は「労働三法」と呼ばれる法律であり、「労働三権」ではありません。労働三権は団結権・団体交渉権・団体行動権という憲法上の権利です。 ④は正しい記述です。公務員の労働基本権は、職種に応じて制限の程度が異なります。
答え:③
例題3(応用)
問題
次のA〜Fの語句を、「労働三権」に分類されるものと「労働三法」に分類されるものにそれぞれ振り分けよ。
A. 団体交渉権 B. 労働基準法 C. 団結権 D. 労働組合法 E. 労働関係調整法 F. 団体行動権(争議権)
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労働三権は、労働者に保障される憲法上の権利である団結権・団体交渉権・団体行動権です。労働三法は、それらを具体化する法律である労働基準法・労働組合法・労働関係調整法です。
答え:労働三権→A、C、F/労働三法→B、D、E
例題4(発展)
問題
次の文章について、正しいものには○、誤っているものには×をつけよ。
(a) 労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律であり、これを下回る労働契約は無効となる。 (b) 労働組合法は、労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権を具体的に保障する法律である。 (c) 公務員には、警察官や消防職員も含め、団結権を含む労働三権のすべてが一般の労働者と全く同じように保障されている。 (d) 労働関係調整法は、労使間の争議を予防・解決するための斡旋・調停・仲裁などの手続きを定めた法律である。
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(a) 正しい。労働基準法は労働条件の最低基準を定め、これを下回る契約部分は無効です。 (b) 正しい。労働組合法は労働三権を具体的に保障するための法律です。 (c) 誤り。公務員の労働基本権は職種に応じて制限されており、特に警察官・消防職員・自衛官・海上保安庁職員・刑事施設職員などは団結権も認められていません。また公務員一般に団体行動権(争議権)は全面的に禁止されています。 (d) 正しい。労働関係調整法は、労使間の争議を調整する手続きを定めた法律です。
答え:(a)○ (b)○ (c)× (d)○
確認問題
問題
労働三権のうち、ストライキなどの争議行為を行う権利を何というか。また、この権利が全面的に禁止されている勤労者の代表例を一つ答えよ。
答え
団体行動権(争議権)/公務員(国家公務員・地方公務員)