日本国憲法と基本的人権 / 新しい人権

知る権利

要点整理

知る権利とは

政府や地方公共団体は、国民生活に関わる多くの情報を保有しています。国民が主権者として政治に参加し、正しい判断を行うためには、こうした情報が適切に公開されていることが不可欠です。この、政府・行政機関の持つ情報の公開を求める権利を知る権利といいます。

知る権利も、環境権と同じく憲法に明文の規定はない「新しい人権」です。主に第21条が保障する表現の自由を根拠とし、「表現する自由」の裏側にある「情報を受け取る自由」として位置づけられます。国民が十分な情報を持たなければ国民主権も民主政治も実質的に機能しないという考え方から、知る権利は国民主権の原理を支える権利として重視されています。

情報公開法とアカウンタビリティ

知る権利を制度として具体化したのが、1999年に制定され、2001年に施行された情報公開法(正式名称:行政機関の保有する情報の公開に関する法律)です。この法律は、日本国籍の有無を問わず「何人も」国の行政機関に対して情報の開示を請求できることを定めています。

情報公開制度の理念的な基盤となっているのが**アカウンタビリティ(説明責任)**という考え方です。これは、政府や行政機関が、自らの活動について国民に説明する責任を負っているとする考え方で、情報公開法の目的規定にも、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務(アカウンタビリティ)が全うされるようにすることが掲げられています。

なお、都道府県・市区町村などの地方公共団体については、それぞれが独自に情報公開条例を制定しており、実際には多くの地方公共団体が国の情報公開法よりも先行して情報公開の制度を整えていました。

特定秘密保護法

一方で、防衛・外交・スパイ活動の防止・テロ活動の防止という4分野について、国の安全保障に関わる特に秘匿性の高い情報を「特定秘密」に指定し、その漏洩を防止することを目的とする特定秘密保護法が、2013年に制定されました。

特定秘密保護法は、情報公開法や知る権利とは逆に「情報を公開しない」ことを制度化する法律です。そのため、この法律に対しては、何が特定秘密に指定されるかが行政機関の判断に委ねられており、国民の知る権利や報道機関の取材・報道の自由を不当に制約するおそれがあるという批判が強く出されています。この「知る権利を広げる情報公開法」と「知る権利を制約しうる特定秘密保護法」という、方向性が逆の2つの法律を対比させて理解しておくことが重要です。

例題

例題1(基本)

問題

次の文章の空欄に当てはまる語句を答えよ。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)は、1999年に制定され、(①)年に施行された。この法律の理念的な基盤となっている、政府が自らの活動を国民に説明する責任のことを(②)という。

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情報公開法は1999年制定、2001年施行です。また、政府の説明責任はアカウンタビリティと呼ばれます。

答え:①2001 ②アカウンタビリティ(説明責任)

例題2(標準)

問題

知る権利と情報公開法に関する記述として最も適切なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

① 知る権利は、憲法第25条の生存権を直接の根拠として主張される権利である。 ② 情報公開法は、日本国籍を持つ国民のみが開示請求を行うことができると定めている。 ③ 情報公開法は1999年に制定され、2001年に施行された。 ④ 情報公開法は、地方公共団体の情報公開条例に先立って制定された、日本で最初の情報公開制度である。

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①は誤りで、知る権利は主に第21条の表現の自由を根拠とします。②は誤りで、情報公開法は「何人も」開示請求できると定めており、国籍を限定していません。④は誤りで、実際には多くの地方公共団体の情報公開条例のほうが国の情報公開法より先行していました。③が正しい記述です。

答え:③

例題3(応用)

問題

次のA〜Cの法律・制度と、その内容を説明したア〜ウの組み合わせとして正しいものを、あとの①〜④のうちから一つ選べ。

A 情報公開法 B 特定秘密保護法

ア 防衛・外交等に関する特に秘匿性の高い情報を指定し、その漏洩を防止することを目的とする。 イ 何人も国の行政機関に対して保有情報の開示を請求できることを定める。 ウ 個人情報を取り扱う事業者に、その適正な取扱いに関する義務を課す。

① A-ア B-イ ② A-イ B-ア ③ A-イ B-ウ ④ A-ウ B-ア

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情報公開法(A)は行政機関の保有する情報の開示を請求できる制度なのでイ、特定秘密保護法(B)は秘匿性の高い情報の漏洩防止を目的とする法律なのでアです。ウは個人情報保護法の説明であり、A・Bのいずれにも該当しません。

答え:②

例題4(発展)

問題

情報公開法と特定秘密保護法の関係について述べた次の文①〜④のうち、誤っているものを一つ選べ。

① 情報公開法は「知る権利」を広げる方向の制度であるのに対し、特定秘密保護法は情報の非公開を制度化するものであり、両者は方向性が逆である。 ② 特定秘密保護法は、防衛・外交など安全保障に関わる情報の漏洩防止を目的として2013年に制定された。 ③ 特定秘密保護法に対しては、何が特定秘密に指定されるかが不透明であり、国民の知る権利や報道の自由を不当に制約するおそれがあるとの批判がある。 ④ 情報公開法が制定されたことにより、特定秘密保護法で指定された特定秘密についても、何人でも開示請求をすれば必ず開示される。

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④が誤りです。特定秘密保護法によって特定秘密に指定された情報は、情報公開法上も原則として不開示情報として扱われるため、情報公開法に基づく開示請求をしても開示されるとは限りません。①〜③はいずれも正しい記述です。「情報公開法=公開を広げる」「特定秘密保護法=非公開を制度化する」という対立構造を混同させるひっかけに注意しましょう。

答え:④

確認問題

問題

情報公開法の理念的な基盤となっている、政府が自らの活動内容について国民に説明する責任を何というか、カタカナで答えよ。

答え

アカウンタビリティ