日本国憲法と基本的人権 / 参政権・請願権・国務請求権
参政権・請願権・国務請求権
要点整理
参政権
参政権とは、国民が政治に参加する権利の総称です。日本国憲法15条1項は、次のように定めています。
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
これは、国会議員や地方議会議員などの公務員を選び、また辞めさせる権利が国民にあることを定めたもので、国民主権の原理を具体化した規定です。ここから、選挙権(投票する権利)・被選挙権(候補者になる権利)が導かれます。
さらに15条3項・4項は、選挙の方法について次の2つの原則を保障しています。
- 普通選挙(15条3項):財産や納税額、性別などによって選挙権を制限しない選挙制度。
- 秘密選挙(15条4項):誰に投票したかを他人に知られない、投票の秘密が保障される制度。
直接民主制的な権利
日本国憲法は、国民が選挙で選んだ代表者を通じて政治を行う間接民主制(代表民主制)を基本の仕組みとしていますが、例外的に、国民が直接意思決定に参加する仕組みも用意されています。これらを直接民主制的な権利と呼び、代表的なものが次の3つです。
| 権利 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 最高裁判所裁判官の国民審査 | 79条2項・3項 | 最高裁判所の裁判官が適任かどうかを、任命後初の衆議院議員総選挙の際などに、国民が投票で審査する制度。 |
| 地方特別法の住民投票 | 95条 | 一の地方公共団体のみに適用される特別法を国会が制定するには、その地方公共団体の住民投票で過半数の同意を得なければならない。 |
| 憲法改正の国民投票 | 96条 | 憲法改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票でその過半数の賛成を得て初めて成立する。 |
この3つは、いずれも「国民が直接、賛成・反対の意思を投票で示す」という点で共通しており、条文番号(79条・95条・96条)とセットで、どの制度がどの条文にあたるかを正確に対応させて覚える必要があります。
請願権
日本国憲法16条は、次のように定めています。
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
これを請願権と呼びます。請願権は、国や地方公共団体に対して、法律の制定・改廃や損害の救済などを求めて要望を申し出る権利で、参政権を持たない未成年者や外国人にも保障される点が特徴です。ただし、請願を受けた側に、その内容を実現する法的な義務が生じるわけではありません。
国務請求権(受益権)
**国務請求権(受益権)**とは、国民が国に対して一定の行為(救済や補償など)を積極的に請求できる権利の総称です。代表的なものとして、次の3つがあります。
| 権利 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 国家賠償請求権 | 17条 | 公務員の不法行為によって損害を受けたとき、国や公共団体にその賠償を求めることができる権利。 |
| 裁判を受ける権利 | 32条 | 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われないという権利。 |
| 刑事補償請求権 | 40条 | 抑留・拘禁された後に無罪の裁判を受けたとき、国にその補償を求めることができる権利。 |
これらはいずれも、国民が国という「国家」に対して具体的な行為を求めることができる権利である点で共通しており、自由権(国家からの自由)や参政権(国家への自由)とは性格が異なります。
なぜテストで狙われるか
- 79条(国民審査)・95条(地方特別法の住民投票)・96条(憲法改正の国民投票)という、似た性質の直接民主制的な権利の条文番号を入れ替えるひっかけが頻出です。
- 17条(国家賠償請求権)・32条(裁判を受ける権利)・40条(刑事補償請求権)という国務請求権(受益権)の3つの条文番号の組み合わせ問題。
- 請願権(16条)は参政権を持たない人(未成年者・外国人)にも保障される、という点。
- 15条1項(公務員の選定・罷免権)、15条3項(普通選挙)、15条4項(秘密選挙)という、同じ15条の中の項の使い分け。
例題
例題1(基本)
問題
次の文の空欄に当てはまる語句・数字を答えよ。
日本国憲法15条1項は、公務員を選定し、これを罷免することは(①)固有の権利であると定めている。また、15条3項は財産や性別によって選挙権を制限しない(②)選挙を、15条4項は誰に投票したかを知られない(③)選挙をそれぞれ保障している。国や地方公共団体に法律の制定・改廃などを求める権利を(④)権といい、憲法(⑤)条に規定がある。
解答・解説を見る
①は15条1項の主語、②③は選挙の2つの原則、④⑤は損害の救済や法律の制定改廃を求める権利とその条文番号です。
答え:①国民 ②普通 ③秘密 ④請願 ⑤16
例題2(標準)
問題
参政権・国務請求権に関する記述として誤っているものを、次の①〜④のうちから1つ選べ。
① 15条1項は、公務員を選定・罷免することが国民固有の権利であると定めている。 ② 国家賠償請求権は17条、裁判を受ける権利は32条、刑事補償請求権は40条にそれぞれ規定されている。 ③ 請願権は日本国民のみに保障される権利であり、外国人には保障されない。 ④ 最高裁判所裁判官の国民審査は、79条に規定された直接民主制的な権利の一つである。
解答・解説を見る
①は正しい記述です。15条1項の内容のとおりです。 ②も正しい記述です。国務請求権(受益権)の3つの条文番号のとおりです。 ③が誤りです。請願権は、参政権を持たない未成年者や外国人にも保障される権利です。「日本国民のみ」というのは誤りです。 ④は正しい記述です。国民審査は79条に規定された直接民主制的な権利の一つです。
答え:③
例題3(応用)
問題
次のA〜Fの権利・制度を、それぞれ規定している条文番号(79条・95条・96条・17条・32条・40条)と正しく組み合わせよ。
A. 最高裁判所裁判官の国民審査 B. 憲法改正の国民投票 C. 一の地方公共団体のみに適用される特別法の住民投票 D. 国家賠償請求権 E. 裁判を受ける権利 F. 刑事補償請求権
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直接民主制的な権利のうち、国民審査は79条、地方特別法の住民投票は95条、憲法改正の国民投票は96条です。国務請求権(受益権)のうち、国家賠償請求権は17条、裁判を受ける権利は32条、刑事補償請求権は40条です。
答え:A→79条、B→96条、C→95条、D→17条、E→32条、F→40条
例題4(発展)
問題
次の文章について、正しいものには○、誤っているものには×をつけよ。
(a) 憲法改正の国民投票は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議した後に行われ、有効投票の過半数の賛成で承認される。 (b) 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、国会の議決だけで制定することができ、住民投票は必要とされない。 (c) 請願権は、法律の制定・改廃や公務員の罷免などについて、平穏に要望を申し出る権利であり、要望が必ず実現されることまでは保障していない。 (d) 刑事補償請求権は、起訴されて有罪判決を受けた者が、その量刑の軽減を求めることができる権利である。
解答・解説を見る
(a) 正しい。96条の憲法改正手続きの内容のとおりです。 (b) 誤り。95条により、一の地方公共団体のみに適用される特別法を国会が制定するには、その地方公共団体の住民投票で過半数の同意を得ることが必要です。 (c) 正しい。請願権は要望を申し出る権利であり、その内容の実現までを法的に保障するものではありません。 (d) 誤り。刑事補償請求権(40条)は、抑留・拘禁された後に無罪の裁判を受けた者が、国にその補償を求めることができる権利です。有罪判決を受けた者の量刑軽減を求める権利ではありません。
答え:(a)○ (b)× (c)○ (d)×
確認問題
問題
一の地方公共団体のみに適用される特別法を国会が制定する際に必要とされる手続きを、条文番号とあわせて答えよ。
答え
その地方公共団体の住民投票でその過半数の同意を得ること(95条)