日本国憲法と基本的人権 / 日本国憲法の成立と基本原理

日本国憲法の三大原則と最高法規性

要点整理

日本国憲法の三大原則

日本国憲法は、次の3つを基本原則としています。

  1. 国民主権:国の政治のあり方を最終的に決める権限(主権)は国民にあるという原理です。前文と1条に規定されており、1条では天皇の地位も「主権の存する日本国民の総意に基く」ものとされています。
  2. 基本的人権の尊重:人が生まれながらにしてもつ、侵すことのできない永久の権利を尊重するという原理です。11条は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と定め、97条もほぼ同様の趣旨を重ねて規定しています。
  3. 平和主義:戦争を放棄し、戦力を保持しないという原理です。前文で恒久平和の理念がうたわれ、9条で戦争放棄・戦力不保持・交戦権の否認が具体的に定められています(9条の詳しい内容は次の単元で学びます)。

この3つの原則は、大日本帝国憲法(天皇主権・法律の留保付きの人権・天皇の統帥権のもとでの軍備)からの根本的な転換を表すものであり、日本国憲法を特徴づける最も重要なキーワードです。

硬性憲法と改正手続き(96条)

日本国憲法は、通常の法律よりもはるかに厳格な手続きを経なければ改正できない、硬性憲法です。これに対し、通常の法律と同じ手続きで改正できる憲法を軟性憲法といいます。

憲法改正の手続きは、96条に次のように定められています。

  1. 国会の発議:各議院(衆議院・参議院)の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が憲法改正を発議する。
  2. 国民投票:国会の発議にもとづき、国民投票が行われ、有効投票の過半数の賛成を得る。
  3. 天皇の公布:国民の承認を経た憲法改正は、天皇が国民の名で直ちにこれを公布する。

ここでの数字の正確な区別が非常に重要です。国会の発議に必要なのは「総議員」の3分の2以上(出席議員ではない)であり、国民投票で必要なのは「過半数」(3分の2ではない)です。この「発議は3分の2、承認は過半数」という組み合わせと、「出席議員」ではなく「総議員」の3分の2という点は、繰り返し問われる最重要ポイントです。

なお、日本国憲法は1947年の施行以来、一度も改正されたことがありません。

最高法規性(98条)

98条1項は、日本国憲法を「国の最高法規」と位置づけ、「その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と定めています。これを憲法の最高法規性といいます。

つまり、法律・命令・条例などは、必ず憲法の内容に適合していなければならず、憲法に違反する法律等は無効となります。この最高法規性を裏付けるしくみとして、裁判所が法律等が憲法に違反していないかを審査する**違憲審査制(違憲立法審査権)**があります(81条)。

また、99条は天皇・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員に対して憲法尊重擁護義務を課しています。この義務の名宛人に「国民」が含まれていない(国民一般には課されていない)点も、細かい正誤問題で問われることがあります。

なぜテストで狙われるか

  • 三大原則の名称そのもの(国民主権・基本的人権の尊重・平和主義)と、それぞれの根拠条文(1条、11条・97条、9条)の対応。
  • 96条の改正手続きの数字:国会発議は「総議員」の「3分の2以上」、国民投票は「過半数」という、分母・分子・対象の正確な組み合わせ。「出席議員の3分の2」「総議員の過半数」などの入れ替えひっかけ。
  • 「硬性憲法」と「軟性憲法」の用語の意味と、日本国憲法がどちらに該当するか。
  • 98条の最高法規性の内容(憲法に反する法律・命令等は無効)と、99条の憲法尊重擁護義務の名宛人(国民は含まれない)の区別。

例題

例題1(基本)

問題

次の文の空欄に当てはまる語句・数字を答えよ。

日本国憲法の三大原則は、(1)・(2)・(3)である。また、憲法改正には、各議院の総議員の(4)以上の賛成による国会の発議と、国民投票における(5)の賛成が必要であり、このように改正に厳格な手続きを要する憲法を(6)という。

解答・解説を見る

三大原則、改正手続きの分母・分子、憲法の分類名を順に埋めます。

答え:(1)国民主権 (2)基本的人権の尊重 (3)平和主義 (4)3分の2 (5)過半数 (6)硬性憲法

例題2(標準)

問題

日本国憲法の改正手続きに関する記述として正しいものを、次の①〜④のうちから1つ選べ。

① 憲法改正の発議には、各議院の出席議員の3分の2以上の賛成が必要である。 ② 憲法改正の発議には、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要である。 ③ 国民投票では、有効投票の3分の2以上の賛成が必要である。 ④ 憲法改正が国民に承認された場合、内閣総理大臣が国民の名でこれを公布する。

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①は誤り。「出席議員」ではなく「総議員」の3分の2以上です。 ②が正しい記述です。 ③は誤り。国民投票で必要なのは「3分の2以上」ではなく「過半数」です。 ④は誤り。公布するのは内閣総理大臣ではなく「天皇」です(96条2項)。

答え:②

例題3(応用)

問題

次のA〜Cの文が説明している用語を、それぞれ答えよ。

A. 通常の法律よりも厳格な手続きを経なければ改正できない憲法。 B. 国のすべての法の中で最も強い効力をもち、これに反する法律・命令等は効力を有しないという性質。 C. 天皇・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員に課される、憲法を尊重し擁護する義務。

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Aは改正手続きの厳格さに関する分類、Bは98条が定める性質、Cは99条が定める義務です。

答え:A.硬性憲法 B.最高法規性 C.憲法尊重擁護義務

例題4(発展)

問題

次の文章のうち、内容が正しいものには○、誤っているものには×をつけよ。

(a) 日本国憲法99条の憲法尊重擁護義務は、天皇・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員だけでなく、一般の国民にも課されている。 (b) 日本国憲法は施行以来、一度も改正されたことがない。 (c) 基本的人権の尊重の根拠となる条文には、11条と97条がある。 (d) 平和主義の原則は、前文にのみ規定されており、本文の条文には規定されていない。

解答・解説を見る

(a) 誤り。99条の憲法尊重擁護義務の名宛人は天皇・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員であり、一般の国民は含まれていません。これは、憲法が本来「国家権力を縛るもの」であるという立憲主義の考え方に対応しています。 (b) 正しい。日本国憲法は1947年の施行以来、改正の実績はありません。 (c) 正しい。11条・97条がともに基本的人権の永久不可侵性を定めています。 (d) 誤り。平和主義は前文だけでなく、本文の9条にも具体的に規定されています。

答え:(a)× (b)○ (c)○ (d)×

確認問題

問題

憲法改正の手続きにおいて、国会が発議するために必要な各議院の賛成の割合と、その対象(総議員か出席議員か)を答えよ。

答え

各議院の総議員の3分の2以上の賛成