日本国憲法と基本的人権 / 経済の自由と平等権

法の下の平等と主要な違憲判決

要点整理

14条は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定める。ここで列挙されている人種・信条・性別・社会的身分・門地は、差別が問題になりやすい代表例を挙げたものであり、これら以外の事由による不合理な差別も禁止されると解されている。また、14条が求める平等は、すべての人をまったく同じに扱う絶対的平等ではなく、事柄の性質に応じた合理的な理由に基づく区別までは許容する相対的平等の考え方に立っている。

この単元で最も重要なのは、法の下の平等をめぐって最高裁が判断した3つの代表判例について、「結論(合憲か違憲か)」「対象となった条文」「年」を、それぞれ混同せずに正確に対応させることである。

尊属殺重罰規定違憲判決(最高裁1973年)

事件の経緯

実父から長年にわたり虐待を受け続けていた女性が、ついに実父を殺害するに至った事件で、刑法200条(尊属殺人罪。被害者が自己又は配偶者の直系尊属である場合の殺人罪について、死刑又は無期懲役のみを科すと定めていた規定)が適用された。被告側は、この規定が普通殺人罪(刑法199条)に比べて著しく重い刑罰のみを定めていることが、14条の法の下の平等に違反すると主張した。

争点

尊属に対する殺人罪について、一般の殺人罪よりも著しく重い刑罰(死刑又は無期懲役のみ)を定める刑法200条が、14条に違反する不合理な差別にあたるか。

判決・決定の内容

最高裁大法廷は、尊属を尊重・報恩するという道徳は社会生活上の基本的な倫理であり、尊属殺を重く罰するという立法目的自体には合理性があるとしつつも、その手段として、死刑又は無期懲役のみしか選択できず、酌量による刑の減軽をしても執行猶予すら付けられないという刑の加重の程度が、目的達成に必要な限度をはるかに超えて著しく不合理であるとして、刑法200条を14条に**違反する(違憲)**と判断した。

なぜテストで狙われるか

最高裁が法律の規定そのものを憲法違反として無効とした、数少ない重要な先例の一つである。年(1973年)、対象条文(刑法200条)、結論(違憲)をセットで問われる。

婚外子(非嫡出子)相続分差別違憲決定(最高裁2013年)

事件の経緯

民法900条4号ただし書は、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(婚外子・非嫡出子)の法定相続分を、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子(嫡出子)の2分の1と定めていた。相続をめぐる家事審判の中で、この規定の合憲性が争われた。

争点

子ども自身には選択の余地がない事情(両親が法律上の婚姻関係にあるかどうか)によって、相続分に差を設けることが、14条の法の下の平等に違反しないか。

判決・決定の内容

最高裁大法廷は、家族の形態が多様化し、婚姻や家族のあり方に対する国民の意識も変化してきたことなどを踏まえ、子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事情によって不利益を及ぼすことは許されないとして、婚外子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書の規定を、14条に**違反する(違憲)**と判断した。

なぜテストで狙われるか

尊属殺重罰規定違憲判決と並ぶ、最高裁が違憲と判断した代表例である。裁判ではなく家事審判事件であるため「判決」ではなく「決定」という形式である点、年(2013年)、対象条文(民法900条)を正確に押さえる必要がある。

夫婦同姓規定合憲判決(最高裁2015年、2021年も合憲判断を維持)

事件の経緯

民法750条は、夫婦は婚姻の際に夫又は妻のいずれかの氏(姓)を称すると定めており(夫婦同氏制)、実際には夫婦のどちらか一方が必ず改姓しなければならない。この規定が、14条の法の下の平等や、24条の婚姻の自由・両性の本質的平等に違反するとして争われた。

争点

夫婦同氏を事実上強制する民法750条の規定が、14条・24条に違反しないか。

判決・決定の内容

最高裁大法廷は2015年、夫婦同氏制それ自体は、婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっていることなども踏まえると、直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に反するとまではいえないとして、民法750条は憲法に**違反しない(合憲)**と判断した。この合憲判断は、2021年にも最高裁大法廷によって維持されている。

なぜテストで狙われるか

上で見た2つの違憲判決と異なり「合憲」とされた点が最大のポイントである。尊属殺重罰規定(違憲)・婚外子相続分差別(違憲)・夫婦同氏制(合憲)という3つの判決の結論を混同しないことが、この分野で最も重要な注意点となる。

平等権に関する3つの判例の対比

尊属殺重罰規定違憲判決 婚外子相続分差別違憲決定 夫婦同姓規定合憲判決
対象条文 刑法200条 民法900条4号ただし書 民法750条
内容 尊属殺に死刑・無期懲役のみを科す 婚外子の相続分を嫡出子の2分の1とする 夫婦は婚姻の際にいずれかの氏を称する
最高裁の判断(年) 違憲(1973年) 違憲(2013年) 合憲(2015年、2021年も維持)

ハンセン病訴訟

らい予防法に基づき、国が長期間にわたってハンセン病患者を強制的に隔離する政策をとってきたことについて、元患者らが国家賠償を求めて訴えを起こした。最高裁判所ではなく地方裁判所の段階で、裁判所は国の隔離政策を違法と認め、国に賠償を命じる判決を下した。国はこの判決に対して控訴せず、政府(当時の内閣総理大臣)は元患者らに謝罪し、賠償を行った。人権侵害を国自身が認め、謝罪と賠償に至った事例として位置づけられる。

部落差別とアイヌ民族の権利

部落差別の撤廃を求める運動として、1922年に全国水平社が結成された。被差別部落の人々自身の手による、差別からの解放を目指す運動体として、日本の人権運動史上重要な位置を占める。

アイヌ民族に関しては、1997年にアイヌ文化振興法が制定され、アイヌの伝統文化の振興が図られた。さらに2019年には、これを発展させる形でアイヌ民族支援法が制定され、アイヌを日本の先住民族として法律上初めて明記するとともに、その文化の維持・振興を推進することが目的として掲げられた。

男女平等に関する法制度

性別による差別の是正に関しては、男女雇用機会均等法が、雇用の分野における性別を理由とする差別の禁止などを定めている。日本は、国際的な取り組みである女性差別撤廃条約を批准しており、条約の求める水準に対応する国内法の整備が進められてきた。

例題

例題1(基本)

問題

次の文中の空欄に適する語句を答えよ。

憲法( ① )条1項は、すべて国民は法の下に平等であり、人種、信条、性別、社会的身分又は( ② )により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されないと定めている。

解答・解説を見る

法の下の平等を定める条文は14条であり、1項では、人種・信条・性別・社会的身分・門地による差別を禁止しています。

答え:① 14 ② 門地

例題2(標準)

問題

平等権をめぐる最高裁判例に関する記述として、正しいものを1つ選べ。

  1. 尊属殺重罰規定違憲判決(1973年)では、最高裁は刑法200条を14条に違反しないとして合憲と判断した。
  2. 婚外子相続分差別違憲決定(2013年)では、最高裁は民法900条の規定を14条に違反するとして違憲と判断した。
  3. 夫婦同姓規定合憲判決(2015年)では、最高裁は民法750条の夫婦同氏制の規定を14条・24条に違反するとして違憲と判断した。
  4. 尊属殺重罰規定違憲判決は2013年に、婚外子相続分差別違憲決定は1973年に、それぞれ最高裁により判断された。
解答・解説を見る

1は誤りです。尊属殺重罰規定違憲判決では、刑法200条は14条に違反する違憲な規定であると判断されました。

2は正しい記述です。婚外子相続分差別違憲決定(2013年)では、民法900条4号ただし書の規定が14条に違反するとして違憲と判断されました。

3は誤りです。夫婦同姓規定合憲判決では、民法750条の規定は憲法に違反しない(合憲)と判断されました。

4は誤りです。尊属殺重罰規定違憲判決は1973年、婚外子相続分差別違憲決定は2013年の判断であり、年が入れ替わっています。

答え:2

例題3(応用)

問題

次のACの記述と、それぞれが示す判例アウの組み合わせとして正しいものを選べ。

A 尊属に対する殺人罪に死刑又は無期懲役のみを科す規定が、14条に違反するとして違憲と判断された。

B 夫婦のいずれかが必ず改姓することを求める規定が、憲法に違反しないとして合憲と判断された。

C 婚外子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする規定が、14条に違反するとして違憲と判断された。

ア 婚外子相続分差別違憲決定(2013年) イ 尊属殺重罰規定違憲判決(1973年) ウ 夫婦同姓規定合憲判決(2015年)

  1. A-イ B-ウ C-ア
  2. A-ア B-イ C-ウ
  3. A-ウ B-ア C-イ
  4. A-イ B-ア C-ウ
解答・解説を見る

Aの「尊属に対する殺人罪」「死刑又は無期懲役のみ」「違憲」は尊属殺重罰規定違憲判決(イ)、Bの「夫婦のいずれかが改姓」「合憲」は夫婦同姓規定合憲判決(ウ)、Cの「婚外子の法定相続分」「嫡出子の2分の1」「違憲」は婚外子相続分差別違憲決定(ア)を指しています。3つの判例のうち、結論が「合憲」なのは夫婦同姓規定合憲判決だけである点を軸に整理すると区別しやすくなります。

答え:1(A-イ、B-ウ、C-ア)

例題4(発展)

問題

生徒Xと生徒Yが、平等権に関する3つの判例について次のように話している。誤っている発言をしているのはどちらか、理由とともに答えよ。

X「尊属殺重罰規定違憲判決も婚外子相続分差別違憲決定も、どちらも最高裁が法律の規定を14条違反(違憲)と判断した点で共通しているね。」

Y「3つの判例はどれも同じ結論で、最高裁はいずれの規定も14条に違反する違憲な規定だと判断しているんだよ。」

解答・解説を見る

Xの発言は正しい内容です。尊属殺重罰規定違憲判決(1973年、刑法200条)と婚外子相続分差別違憲決定(2013年、民法900条)は、いずれも最高裁が14条違反(違憲)と判断した点で共通しています。

Yの発言は誤りです。夫婦同姓規定合憲判決(2015年、民法750条)では、最高裁は規定が憲法に違反しない(合憲)と判断しており、他の2つの違憲判決とは結論が異なります。「平等権に関する判例=すべて違憲」と思い込んでしまう誤りに注意する必要があります。

答え:Yが誤り。夫婦同姓規定合憲判決では、民法750条の規定は合憲と判断されており、他の2つの違憲判決とは結論が異なる。

確認問題

問題

2019年に制定され、アイヌを法律上初めて先住民族と明記した法律の名称を答えよ。

答え

アイヌ民族支援法