日本国憲法と基本的人権 / 自衛隊の海外派遣と安全保障法制

集団的自衛権と安全保障関連法(2015年)

要点整理

個別的自衛権と集団的自衛権

自衛権には、大きく分けて2つの種類があります。

  • 個別的自衛権:自国が他国から武力攻撃を受けた際に、自国を防衛するために実力を行使する権利。
  • 集団的自衛権:自国が直接攻撃されていなくても、自国と密接な関係にある他国が攻撃を受けた場合に、その国を防衛するために共同して実力を行使する権利。

日本政府は長らく、憲法9条のもとでも個別的自衛権の行使は認められるが、集団的自衛権の行使は憲法上許されないという解釈をとってきました。

自衛権行使の旧三要件

従来、日本が自衛権(個別的自衛権)を行使できるのは、次の3つの要件をすべて満たす場合に限られるとされてきました(旧三要件)。

  1. わが国に対する急迫不正の侵害があること。
  2. これを排除するために他の適当な手段がないこと。
  3. 必要最小限度の実力行使にとどまること。

2014年の閣議決定と新三要件

2014年、安倍内閣は、集団的自衛権の行使に関する政府の憲法解釈を見直す閣議決定を行いました。これにより、従来「憲法上許されない」とされてきた集団的自衛権について、一定の限られた場合には、その限定的な行使が認められるという解釈に変更されました。

この閣議決定では、自衛権発動の要件も見直され、新たに次のような「新三要件」が示されました。

  • わが国に対する武力攻撃が発生した場合、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命・自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。
  • これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。

つまり、日本が直接攻撃されていなくても、日本の存立が脅かされるような明白な危険がある場合には、限定的に集団的自衛権を行使できるという解釈に変わったのです。

2015年 平和安全法制(安全保障関連法)

2014年の閣議決定を法律の形に反映するため、2015年、**平和安全法制(安全保障関連法)**が制定されました。これは単一の法律の名前ではなく、自衛隊法・PKO協力法・重要影響事態法(周辺事態法からの改正)など、複数の関連法を一括して改正する法律群の通称であり、集団的自衛権の限定的な行使を可能にする内容が盛り込まれました。

これとあわせて、同じ2015年に、新たに国際平和支援法が制定されました。これは、従来のテロ対策特別措置法やイラク復興支援特別措置法のように、その都度、時限立法(期限付きの特別措置法)を制定するのではなく、国会の承認などの手続きを経ることを条件に、時限立法によらず随時、他国軍への後方支援を可能にする恒久法です。

文民統制(シビリアン・コントロール)

自衛隊のような実力組織が、政治から独立して暴走することを防ぐため、日本では文民統制(シビリアン・コントロール)の原則がとられています。これは、軍事的な判断・行動を、職業軍人ではない者が統制するという考え方で、日本では内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持ち、防衛に関する重要事項は国会や内閣による民主的な統制のもとに置かれています。

なぜテストで狙われるか

  • 2014年 安倍内閣の閣議決定 → 集団的自衛権の限定的な行使を容認」「2015年 平和安全法制の制定」という年号・内閣名・出来事の対応関係が最頻出。
  • 旧三要件」(急迫不正の侵害、他に適当な手段がないこと、必要最小限度)と「新三要件」(わが国の存立が脅かされ国民の権利が根底から覆される明白な危険があることなどを含む)の内容の違いを正確に区別できるかが問われる。特に、新三要件で初めて「密接な関係にある他国への攻撃」が要件に含まれるようになった点が重要。
  • 2015年に制定されたのが「平和安全法制」(既存の関連法の一括改正)と「国際平和支援法」(新規制定の恒久法)の2つの異なるものであることを混同しないこと。
  • 国際平和支援法が「時限立法ではなく恒久法である」という点は、前の単元で学んだテロ対策特別措置法・イラク復興支援特別措置法(どちらも時限立法)との対比で狙われやすい。

旧三要件と新三要件の比較

項目 旧三要件 新三要件(2014年閣議決定)
対象となる自衛権 個別的自衛権のみ 個別的自衛権+限定的な集団的自衛権
発動の前提となる攻撃 わが国に対する急迫不正の侵害 わが国、またはわが国と密接な関係にある他国への武力攻撃で、わが国の存立が脅かされ国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
他の要件 他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使 他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使(共通)

例題

例題1(基本)

問題

2014年、集団的自衛権の限定的な行使を認める憲法解釈への変更を閣議決定した内閣を何というか。また、この変更を法律に反映するために2015年に制定された、自衛隊法など関連法を一括改正する法律群の通称を何というか。

解答・解説を見る

2014年に集団的自衛権の限定的な行使を容認する閣議決定を行ったのは「安倍内閣」です。これを受けて2015年に制定された、関連法を一括改正する法律群の通称は「平和安全法制(安全保障関連法)」です。

答え:安倍内閣/平和安全法制(安全保障関連法)

例題2(標準)

問題

次のうち、集団的自衛権と安全保障関連法について述べた文として、正しいものを1つ選べ。

  1. 旧三要件では、わが国と密接な関係にある他国への攻撃も、自衛権発動の要件に含まれていた。
  2. 新三要件は、わが国の存立が脅かされ国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合などに、自衛権の発動を認めるものである。
  3. 2015年に制定された国際平和支援法は、テロ対策特別措置法と同様の時限立法である。
  4. 文民統制とは、自衛隊の内部で、職業軍人が自らの行動を統制する仕組みのことである。
解答・解説を見る
  1. 誤り。「わが国と密接な関係にある他国への攻撃」が要件に含まれるようになったのは新三要件からであり、旧三要件には含まれていません。
  2. 正しい。新三要件の内容を正しく説明しています。
  3. 誤り。国際平和支援法は、時限立法ではなく恒久法です。
  4. 誤り。文民統制とは、職業軍人ではない者(内閣総理大臣や国会)が軍事的な判断・行動を統制する原則です。

答え:2

例題3(応用)

問題

次のA~Cの語句を、それぞれが最も強く関連するものどうしで組み合わせよ。

A. 旧三要件 B. 新三要件 C. 国際平和支援法

ア. 急迫不正の侵害 イ. わが国の存立が脅かされ国民の権利が根底から覆される明白な危険 ウ. 時限立法によらず随時他国軍への後方支援を可能にする恒久法

解答・解説を見る

Aの旧三要件は個別的自衛権発動の要件で、その中心はアの「急迫不正の侵害」です。Bの新三要件は2014年の閣議決定で示されたもので、その中心はイの「わが国の存立が脅かされ…明白な危険」です。Cの国際平和支援法は、ウの「時限立法によらず随時他国軍への後方支援を可能にする恒久法」です。

答え:A-ア、B-イ、C-ウ

例題4(発展)

問題

「2015年に制定された平和安全法制によって、日本はどのような場合でも集団的自衛権を無制限に行使できるようになった」という説明は、正しいか誤りか。理由とあわせて答えよ。

解答・解説を見る

誤りです。2015年の平和安全法制は、2014年の閣議決定で示された新三要件を満たす場合に限って、集団的自衛権の限定的な行使を可能にしたものであり、「どのような場合でも無制限に行使できる」ようになったわけではありません。新三要件には、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」など厳格な条件が付されており、あくまで限定的な行使にとどまる点を正確に理解しておく必要があります。

答え:誤り。新三要件を満たす場合に限った限定的な行使が認められたのであり、無制限に行使できるようになったわけではない。

確認問題

問題

2015年、テロ対策特別措置法やイラク復興支援特別措置法のような時限立法によらず、随時、他国軍への後方支援を可能にする恒久法として新たに制定された法律を何というか。

答え

国際平和支援法