日本国憲法と基本的人権
共通テスト対策
単元別 対策ポイント
1. 日本国憲法の成立と基本原理
- GHQ(最高司令官マッカーサー)は、天皇主権を維持した日本政府案(松本案)を拒否し、マッカーサー三原則(天皇は元首→最終的に象徴に修正/戦争放棄/封建制度の廃止)にもとづくマッカーサー草案を提示した。
- 日本国憲法は1946年11月3日に公布、1947年5月3日に施行された。大日本帝国憲法(欽定憲法、1889年発布・1890年施行)との違い(主権者・人権観・軍隊の有無)は比較表で必ず整理する。
- 三大原則は国民主権・基本的人権の尊重・平和主義。98条の最高法規性、96条の厳格な改正手続き(硬性憲法)もセットで確認する。
2. 平和主義と自衛隊
- 9条は戦争放棄・戦力不保持・交戦権の否認を定める。自衛隊は**警察予備隊(1950年)→保安隊(1952年)→自衛隊(1954年)**という順で組織が変わってきた。
- 9条をめぐる主要な訴訟(砂川事件・恵庭事件・長沼事件・百里事件)は、いずれも最高裁が自衛隊そのものの合憲性について正面から判断を示していない、という共通点で出題される。砂川事件では日米安保条約の合憲性について統治行為論(高度の政治性を持つ問題は司法審査になじまないとする考え方)が用いられ、恵庭事件・長沼事件・百里事件でも、それぞれ異なる理由で自衛隊の合憲性についての判断が回避されている。
3. 日米安全保障体制
- サンフランシスコ平和条約と同時に(1951年)、日米安全保障条約が締結された。1960年には岸信介内閣のもとで条約が改定され(新安保条約)、安保闘争が起きた。
- 日米地位協定は在日米軍の地位を定めるもので、基地の多くが沖縄に集中していることによる基地問題、米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)もあわせて確認する。
4. 自衛隊の海外派遣と安全保障法制
- 1991年の湾岸戦争で日本の国際貢献のあり方が問われたことを受け、1992年にPKO協力法が成立し、自衛隊がカンボジアPKOに派遣された。
- 2001年の同時多発テロを受けテロ対策特別措置法、2003年にイラク復興支援特別措置法が制定された。有事法制として2003年武力攻撃事態法、2004年国民保護法が整備された。
- 2014年、集団的自衛権の限定的な行使を認める閣議決定が行われ、2015年に安全保障関連法が成立した。個別的自衛権(自国への攻撃に対する防衛)と集団的自衛権(自国と密接な関係にある他国への攻撃を自国への攻撃とみなして共同で防衛する権利)の違いは頻出。
5. 精神の自由と身体の自由
- 精神の自由には、思想・良心の自由(19条)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条)、学問の自由(23条)が含まれる。
- 政教分離をめぐる判例では、**津地鎮祭訴訟(最高裁1977年、合憲)と愛媛玉串料訴訟(最高裁1997年、違憲)**の結論の違いが頻出。合憲・違憲の判断基準として「目的効果基準」がキーワードになる。
- 身体の自由では、適正手続きの保障(31条)、令状主義、黙秘権、罪刑法定主義を整理する。
6. 経済の自由と平等権
- 経済の自由(職業選択の自由・居住移転の自由22条、財産権29条)は、精神の自由に比べて「公共の福祉」による制約を受けやすいとされる。
- 平等権(14条・法の下の平等)に関する主要な違憲判決として、尊属殺重罰規定違憲判決(最高裁1973年)、婚外子相続分差別違憲決定(最高裁2013年)、**女性の再婚禁止期間の一部違憲判決(最高裁2015年)**がある。一方、夫婦同姓を定める民法の規定は合憲(最高裁2015年・2021年)とされている点は、「違憲」となった判例と混同しやすいので要注意。
7. 社会権
- 生存権(25条)の法的性格をめぐるプログラム規定説、**朝日訴訟(最高裁1967年、原告死亡により訴訟終了、傍論でプログラム規定説的見解)と堀木訴訟(最高裁1982年、併給禁止規定を合憲と判断)**の違いが最重要。
- 教育を受ける権利(26条)、労働基本権(28条・労働三権)と、それを具体化する労働三法の区別も頻出。(詳しくは本単元のページを参照)
8. 参政権・請願権・国務請求権
- 参政権の基礎(15条)、直接民主制的な権利(79条国民審査・95条地方特別法の住民投票・96条憲法改正の国民投票)、請願権(16条)、国務請求権(17条国家賠償請求権・32条裁判を受ける権利・40条刑事補償請求権)の条文番号を正確に対応させる。(詳しくは本単元のページを参照)
9. 新しい人権
- 憲法に明文の規定はないが、社会の変化にともなって主張されるようになった権利。環境権(13条・25条を根拠に主張されるが、最高裁が正面から権利性を認めた判例はない)、知る権利(21条を根拠、情報公開法は1999年制定・2001年施行)、プライバシー権(13条を根拠、『宴のあと』事件などを通じて認められてきた)、自己決定権(13条を根拠)がある。いずれも根拠条文が明文にない点、根拠として引かれる条文(13条・21条・25条)を区別して覚える。
実戦問題
問題1(判例の正誤判定)
問題
日本国憲法の基本的人権に関する判例についての記述として誤っているものを、次の①〜④のうちから1つ選べ。
① 朝日訴訟では、原告の死亡により訴訟が終了し、生活保護基準の適否について最高裁が実質的な判断を示すことはなかった。 ② 堀木訴訟では、最高裁は障害福祉年金と児童扶養手当の併給を禁止する規定を違憲と判断した。 ③ 津地鎮祭訴訟では、最高裁は市が体育館の起工式を神道式で行ったことを合憲と判断した。 ④ 尊属殺重罰規定違憲判決では、最高裁は尊属殺人罪に対する刑法の規定を違憲と判断した。
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①は正しい記述です。朝日訴訟は原告死亡により訴訟が終了しました。 ②が誤りです。堀木訴訟で最高裁は、併給禁止規定を合憲と判断しました。「違憲」ではありません。 ③は正しい記述です。津地鎮祭訴訟(最高裁1977年)は合憲判断でした。 ④は正しい記述です。尊属殺重罰規定は最高裁1973年に違憲と判断されました。
答え:②
問題2(年代整序)
問題
次のA〜Dのできごとを、年代の古い順に並べよ。
A. PKO協力法の成立 B. 教育基本法の制定 C. 日本国憲法の公布 D. 安全保障関連法の成立
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日本国憲法の公布は1946年、教育基本法の制定は1947年、PKO協力法の成立は1992年、安全保障関連法の成立は2015年です。
答え:C→B→A→D
問題3(空欄補充)
問題
次の文の空欄に当てはまる語句・数字を答えよ。
日本国憲法25条1項は「健康で(①)な最低限度の生活を営む権利」を保障しており、この権利を(②)という。26条1項は「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」を保障し、28条は勤労者の団結権・団体交渉権・(③)権(あわせて労働三権)を保障している。また、96条は憲法改正について、各議院の総議員の(④)分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票でその過半数の賛成を得て成立すると定めている。
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①②は25条1項の条文と権利の名称、③は労働三権の残り一つ、④は憲法改正の発議要件です。
答え:①文化的 ②生存権 ③団体行動(争議) ④3
問題4(組み合わせ問題)
問題
次のA〜Eの判例・決定を、最高裁が示した結論「合憲」「違憲」「憲法判断を回避した(実質判断を示さなかった)」のいずれかに分類せよ。
A. 朝日訴訟(1967年) B. 堀木訴訟(1982年) C. 津地鎮祭訴訟(1977年) D. 愛媛玉串料訴訟(1997年) E. 砂川事件(1959年)
解答・解説を見る
Aは原告の死亡により訴訟が終了し実質判断が示されなかった判例です。Bは併給禁止規定を合憲と判断した判例です。Cは市の起工式を合憲と判断した判例です。Dは県の玉串料支出を違憲と判断した判例です。Eは日米安全保障条約にもとづく米軍駐留の合憲性について、統治行為論を用いて憲法判断を回避した判例です。
答え:合憲→B、C/違憲→D/憲法判断を回避した→A、E