数学II / 図形と方程式
領域の応用(2次関数のグラフ・積の形の連立不等式・領域を利用した証明)
要点整理
「不等式の表す領域」で学んだ、直線や円を境界とする領域の考え方(境界を含む・含まないの判断、テスト点による確認、連立不等式が表す共通部分)は、もう身についているものとしてこの先を進めます。ここでは、その考え方をさらに広げた3つのテーマ、「2次関数のグラフを境界とする領域」「積の形で表された連立不等式」「領域の包含関係を利用した証明」を学びます。
1. 2次関数のグラフが表す領域
直線 $y=mx+n$ が座標平面を上下2つに分けたのと同じように、2次関数 $y=f(x)$ のグラフ(放物線)も、座標平面を「グラフより上側」と「グラフより下側」の2つの部分に分けます。考え方はまったく同じです。
- $y>f(x)$:グラフより上側の領域(境界の放物線を含まない)
- $y\geqq f(x)$:グラフより上側の領域(境界を含む)
- $y
下側の領域(境界を含まない) - $y\leqq f(x)$:グラフより下側の領域(境界を含む)
不等式が $y=(xの式)$ の形になっていないときは、まず $y$ について解きます。さらに、$f(x)$ が $x^2+px+q$ のような複雑な形をしているときは、平方完成して頂点の座標を求めておくと、放物線の概形(頂点の位置と開き方)がつかみやすくなり、グラフがかきやすくなります。
具体例:不等式 $y>x^2-4x+5$ が表す領域を考えます。右辺を平方完成すると、
$x^2-4x+5=(x-2)^2-4+5=(x-2)^2+1$
なので、$y>(x-2)^2+1$ となり、これは頂点 $(2,1)$ の上に開いた放物線より上側の領域(境界を含まない)を表します。
確認(テスト点):境界上の点である頂点 $(2,1)$ をもとの不等式に代入すると、$1>(2)^2-4\times2+5=4-8+5=1$ となり、$1>1$ は成り立ちません。不等号が $\geqq$ ではなく $>$ なので境界を含まないことと一致しています。一方、頂点の真上の点 $(2,5)$ を代入すると $5>1$ となり成り立つので、この点は領域に含まれます。
2. 積の形で表される連立不等式
ここまでの連立不等式(たとえば「円の内部」かつ「直線の上側」のような形)は、2つ以上の不等式を同時に満たす点の集合、つまり2つの領域の共通部分を考えるものでした。これに対して、$(3x+2y-6)(x-y+2)<0$ のように、左辺が2つの1次式の積になっている不等式は、見た目は連立不等式に似ていますが、解き方も答えの形もまったく異なります。この違いをはっきり区別することが、この単元でいちばん大切なポイントです。
積の形の不等式を解くカギは、次の符号のルールです。$A$、$B$ を実数とすると、
- $AB>0$($A$と$B$の積が正)$\iff$ $A$と$B$は同符号($A>0$かつ$B>0$、または、$A<0$かつ$B<0$)
- $AB<0$($A$と$B$の積が負)$\iff$ $A$と$B$は異符号($A>0$かつ$B<0$、または、$A<0$かつ$B>0$)
つまり、積の形の不等式を解くには、「かつ」で結ばれた2通りの場合分けをそれぞれ考えて、最後にその2つの領域を合わせる(和集合をとる)ことになります。普通の連立不等式が「共通部分」で1つのまとまった領域になるのに対し、積の形の不等式は「和集合」になるため、答えが2つの離れた領域に分かれることがあるという点が、最大の違いです。
具体例:$(3x+2y-6)(x-y+2)<0$ が表す領域を求めてみます。$A=3x+2y-6$、$B=x-y+2$ とおくと、$AB<0$ なので $A$、$B$ は異符号です。それぞれを $y$ について解くと、
$A>0 \iff 3x+2y-6>0 \iff y>-\frac32x+3,\qquad A<0 \iff y<-\frac32x+3$
$B>0 \iff x-y+2>0 \iff y
($B$ を $y$ について解くときは、両辺を $-1$ でわるので不等号の向きが反転することに注意してください。)
異符号になる場合分けは次の2通りです。
- ①($A>0$ かつ $B<0$):$y>-\dfrac32x+3$ かつ $y>x+2$(2直線より上側の共通部分)
- ②($A<0$ かつ $B>0$):$y<-\dfrac32x+3$ かつ $y
下側の共通部分)
求める領域は、①と②の和集合(どちらか一方)です。2直線 $y=-\dfrac32x+3$、$y=x+2$ は $x=\dfrac25$、$y=\dfrac{12}5$ で交わるので(連立して $3x+2(x+2)-6=0$ より $5x=2$)、この交点を中心に、2直線が作る4つの部分のうち、向かい合う(対角の位置にある)2つの部分が答えになります。
確認(テスト点):①の領域の点として $(0,4)$ を選ぶと、$A=3\times0+2\times4-6=2>0$、$B=0-4+2=-2<0$ となり $AB=-4<0$ で成り立ちます。②の領域の点として $(0,0)$ を選ぶと、$A=-6<0$、$B=0-0+2=2>0$ となり $AB=-12<0$ で成り立ちます。一方、2直線の間にある点 $(0,2.5)$ では $A=2\times2.5-6=-1<0$、$B=0-2.5+2=-0.5<0$ となり $AB=0.5>0$ で成り立たず、確かに領域から除かれています。
3. 領域を利用した証明
「$x,y$ が条件Aを満たすならば、条件Bも満たす」という形の命題を証明したいとき、条件Aを満たす点$(x,y)$全体の集合を領域$P$、条件Bを満たす点全体の集合を領域$Q$とすると、この命題は「$P$に属するすべての点は、$Q$にも属する」こと、つまり $P\subseteq Q$($P$は$Q$の部分集合)であることと同じ意味になります。したがって、$P\subseteq Q$ を図形的・代数的に示すことができれば、そのまま命題の証明になります。
$P$、$Q$がどちらも円(の内部)のときは、次の関係が便利です。中心間の距離を$d$、内側になる予定の円の半径を$r_1$、外側になる予定の円の半径を$r_2$とすると、
$d+r_1\leqq r_2 \implies \text{半径}r_1\text{の円は、半径}r_2\text{の円に完全に含まれる}$
これは、半径$r_1$の円周上のどんな点も、中心間の距離$d$と半径$r_1$の分だけ離れた場所より遠くへは行けない(三角不等式)ことから成り立ちます。等号が成り立つときは、2つの円は内部で接します($d+r_1=r_2$)。
具体例:$x,y$ を実数とするとき、「$x^2+y^2<1$ ならば $(x+1)^2+y^2<4$」であることを証明します。領域$P$:$x^2+y^2<1$ は中心 $O(0,0)$、半径 $1$ の円の内部(境界を含まない)、領域$Q$:$(x+1)^2+y^2<4$ は中心 $C(-1,0)$、半径 $2$ の円の内部(境界を含まない)です。
中心間の距離は $OC=1$ です。点 $(x,y)$ が$P$に属する、つまり $x^2+y^2<1$ とすると、原点からその点までの距離は $1$ より小さいので、三角不等式より、
$(\text{点}(x,y)\text{から}Cまでの距離) \leqq (\text{点}(x,y)\text{から}Oまでの距離)+OC < 1+1=2$
したがって $(x+1)^2+y^2<4$ が成り立ち、点$(x,y)$は$Q$にも属します。これがすべての点$(x,y)\in P$について言えるので、$P\subseteq Q$、つまり「$x^2+y^2<1$ ならば $(x+1)^2+y^2<4$」が証明されました。($d+r_1=1+1=2=r_2$ となっており、2つの円がちょうど内部で接する境界のケースです。)
例題
例題1(基本)
問題
不等式 $y-x^2+6x-7\geqq0$ の表す領域を求めなさい。頂点の座標と、境界を含むかどうかもあわせて答えなさい。
解答・解説を見る
$-x^2+6x-7$ を右辺に移項して $y$ について解く形にします。
$y \geqq x^2-6x+7$
右辺を平方完成します。
$x^2-6x+7=(x-3)^2-9+7=(x-3)^2-2$
したがって、
$y \geqq (x-3)^2-2$
これは、頂点 $(3,-2)$ の上に開いた放物線より上側の領域を表します。不等号が $\geqq$(等号を含む)なので、境界の放物線を含みます。
確認(テスト点):境界上の頂点 $(3,-2)$ を代入すると、$-2\geqq(3-3)^2-2=-2$ となり、$-2\geqq-2$ は成り立つので、境界を含むことと一致しています。頂点の真下の点 $(3,-5)$ を代入すると $-5\geqq-2$ は成り立たず、正しく領域から除かれています。また、頂点の真上の点 $(3,0)$ を代入すると $0\geqq-2$ が成り立ち、正しく領域に含まれています。
答え:頂点 $(3,-2)$ の上に開いた放物線 $y=(x-3)^2-2$ より上側の領域(境界を含む)
例題2(標準)
問題
不等式 $(x+y-3)(2x-y+1)<0$ の表す領域を求めなさい。
解答・解説を見る
$A=x+y-3$、$B=2x-y+1$ とおくと、$AB<0$ なので $A$、$B$ は異符号です。それぞれ $y$ について解きます。
$A>0 \iff y>-x+3,\qquad A<0 \iff y<-x+3$
$B>0 \iff 2x-y+1>0 \iff y<2x+1,\qquad B<0 \iff y>2x+1$
異符号になる場合分けは次の2通りです。
- ①($A>0$ かつ $B<0$):$y>-x+3$ かつ $y>2x+1$
- ②($A<0$ かつ $B>0$):$y<-x+3$ かつ $y<2x+1$
求める領域は①と②の和集合です。2直線 $y=-x+3$、$y=2x+1$ の交点は、連立して $-x+3=2x+1$ より $x=\dfrac23$、$y=\dfrac73$ です。
確認(テスト点):①の点として $(0,10)$ をとると、$A=0+10-3=7>0$、$B=2\times0-10+1=-9<0$ となり $AB=-63<0$ で成り立ちます。②の点として $(0,-10)$ をとると、$A=-13<0$、$B=0+10+1=11>0$ となり $AB=-143<0$ で成り立ちます。一方、2直線の間にある点 $(2,3)$ では $A=2+3-3=2>0$、$B=4-3+1=2>0$ となり $AB=4>0$ で成り立たず、正しく除かれています。
答え:$\{y>-x+3$ かつ $y>2x+1\}$ と $\{y<-x+3$ かつ $y<2x+1\}$ を合わせた領域(境界を含まない)。2直線の交点 $\left(\dfrac23,\dfrac73\right)$ を挟んで向かい合う2つの部分になる。
これは連立不等式のように1つのつながった領域ではなく、対角の位置にある2つの離れた領域になることに注意してください。
例題3(応用)
問題
$x,y$ を実数とする。$x^2+y^2\leqq1$ ならば $x+y\leqq\sqrt{2}$ であることを証明しなさい。
解答・解説を見る
方針:$(x+y)^2$ と $x^2+y^2$ の関係を使って、直接不等式を導きます。
まず、次の式を計算します。
$2(x^2+y^2)-(x+y)^2=2x^2+2y^2-x^2-2xy-y^2=x^2-2xy+y^2=(x-y)^2$
$(x-y)^2\geqq0$ なので、
$2(x^2+y^2)-(x+y)^2\geqq0 \quad\text{すなわち}\quad (x+y)^2\leqq2(x^2+y^2)$
ここで、仮定より $x^2+y^2\leqq1$ なので、
$(x+y)^2\leqq2(x^2+y^2)\leqq2\times1=2$
したがって $(x+y)^2\leqq2$ となり、これより $-\sqrt2\leqq x+y\leqq\sqrt2$、特に
$x+y\leqq\sqrt2$
が成り立ちます。(証明終わり)
図形的な見方:領域$P$:$x^2+y^2\leqq1$ は原点中心・半径 $1$ の円の内部(境界を含む)、領域$Q$:$x+y\leqq\sqrt2$ は直線 $x+y=\sqrt2$ より下側(原点を含む側)の半平面です。原点から直線 $x+y-\sqrt2=0$ までの距離を「点と直線の距離の公式」で計算すると、
$\frac{|0+0-\sqrt2|}{\sqrt{1^2+1^2}}=\frac{\sqrt2}{\sqrt2}=1$
これは円$P$の半径とちょうど一致するので、直線は円$P$にちょうど接しています。原点は $0+0=0\leqq\sqrt2$ を満たす($Q$の側にある)ので、円$P$全体が半平面$Q$に含まれる($P\subseteq Q$)ことが図形的にも確認できます。等号が成り立つのは、$(x-y)^2=0$(つまり$x=y$)かつ $x^2+y^2=1$ のとき、すなわち $x=y=\dfrac{\sqrt2}2$ のとき(接点)です。
例題4(発展)
問題
不等式 $(y-x^2)(y-x-2)<0$ の表す領域を求めなさい。
解答・解説を見る
$A=y-x^2$、$B=y-x-2$ とおくと、$AB<0$ なので $A$、$B$ は異符号です。
$A>0 \iff y>x^2,\qquad A<0 \iff y $B>0 \iff y>x+2,\qquad B<0 \iff y ①($A>0$ かつ $B<0$):$y>x^2$ かつ $y $x^2-x-2<0 \iff (x-2)(x+1)<0 \iff -1 の範囲です(2次不等式の解き方は既習の通りです)。 ②($A<0$ かつ $B>0$):$y $x^2-x-2>0 \iff (x-2)(x+1)>0 \iff x<-1 \text{ または } x>2$ の範囲です。 したがって、求める領域は次の2つを合わせたものです。 $-1 確認(テスト点):①の点 $(0,1)$($x^2=0<1 気づき:①と②をあわせると、結局この不等式が表す領域は、放物線 $y=x^2$ と直線 $y=x+2$ の交点 $(-1,1)$、$(2,4)$ を除いた、2つのグラフの「あいだ」にはさまれた点全体になっています($x$の値に応じて、上下どちらのグラフが上にあるかが入れ替わるだけです)。一般に、$(y-f(x))(y-g(x))<0$ の形の不等式は「$y$ が $f(x)$ と $g(x)$ の間にある点の集合」を表すことが分かります。 答え:$-1
練習問題
問題
不等式 $(x-y+1)(2x+y-4)>0$ の表す領域を求めなさい。
答え
$A=x-y+1$、$B=2x+y-4$ とおくと $y$ について解いて $A>0\iff y
- ①($A>0$ かつ $B>0$):$y
-2x+4$ - ②($A<0$ かつ $B<0$):$y>x+1$ かつ $y<-2x+4$
の和集合が答えです(境界を含まない)。2直線 $y=x+1$、$y=-2x+4$ の交点は $(1,2)$ です。
簡単な解説
点 $(3,0)$ で確かめると $A=4>0$、$B=2>0$ で $AB=8>0$ となり①に含まれ成り立ちます。点 $(-1,3)$ で確かめると $A=-3<0$、$B=-3<0$ で $AB=9>0$ となり②に含まれ成り立ちます。
問題
$x,y$ を実数とする。$(x-1)^2+(y-1)^2\leqq2$ ならば $x+y\leqq4$ であることを証明しなさい。
答え
$u=x-1$、$v=y-1$ とおくと仮定は $u^2+v^2\leqq2$。$(u-v)^2\geqq0$ より $(u+v)^2\leqq2(u^2+v^2)\leqq4$ となるので $u+v\leqq2$。したがって $x+y=(u+1)+(v+1)=u+v+2\leqq4$。(証明終わり)
簡単な解説
等号は $u=v$ かつ $u^2+v^2=2$、すなわち $x=y=2$ のときに成り立ちます。図形的には、円 $(x-1)^2+(y-1)^2=2$(中心 $(1,1)$、半径 $\sqrt2$)と直線 $x+y=4$ との距離が $\dfrac{|1+1-4|}{\sqrt2}=\sqrt2$ となり、ちょうど接していることに対応しています。