公式の証明・導出
等差数列の和の公式の証明
関連単元: 数学B 数列
証明する内容
初項 $a_1$、公差 $d$ の等差数列 $\{a_n\}$(一般項は $a_n=a_1+(n-1)d$)について、初項から第 $n$ 項までの和を
$ S_n = a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n $
とします。このとき、次の公式が成り立ちます。
$ S_n = \frac{n}{2}(a_1+a_n) = \frac{n}{2}\{2a_1+(n-1)d\} $
この証明で使う方法は、「同じ和を、順番を逆にしてもう一度書き、2つの式を辺々足し合わせる」という、数学の授業でよく紹介される古典的な方法です。この方法は、数学者ガウスが小学生のころ、先生が出した「$1$から$100$までを全部足しなさい」という問題を、$1+2+\cdots+100$ を逆順の $100+99+\cdots+1$ と組み合わせて瞬時に解いた、という逸話でも知られています。
証明
ステップ1:具体例で考え方を確認する
まず、$1$から$10$までの和 $1+2+3+\cdots+10$ を例に、考え方を確認します。この和を $T$ とし、順番通りに書いた式と、逆の順番に書いた式を並べます。
$ T = 1+2+3+\cdots+9+10 $
$ T = 10+9+8+\cdots+2+1 $
この2つの式を、上下で同じ位置にある項どうし(縦に並んでいる項どうし)足し合わせます。
$ \underbrace{(1+10)}_{11}+\underbrace{(2+9)}_{11}+\underbrace{(3+8)}_{11}+\cdots+\underbrace{(10+1)}_{11} $
縦に並んだどの組も、和が $11$(すなわち初項 $1$ と末項 $10$ の和)で一定になっています。このような組が $10$ 個(項数の分だけ)できるので、
$ 2T = 11\times10 = 110 \ \Longrightarrow \ T = 55 $
一般の等差数列でも、まったく同じ考え方が使えることを、以下で確認します。
ステップ2:$S_n$ を2通りの順序で書く
一般の等差数列 $\{a_n\}$(初項 $a_1$、公差 $d$、一般項 $a_n=a_1+(n-1)d$)について、初項から第$n$項までの和を、まず通常の順序で書きます。
$ S_n = a_1+a_2+a_3+\cdots+a_{n-1}+a_n \quad \cdots ① $
次に、同じ和を、項の順番を逆にして書きます。これは①とまったく同じ数をすべて足しているだけなので、当然同じ値 $S_n$ になります。
$ S_n = a_n+a_{n-1}+a_{n-2}+\cdots+a_2+a_1 \quad \cdots ② $
ステップ3:①と②を辺々足し合わせる
①の左辺と②の左辺を足し、①の右辺と②の右辺を足します。
$ S_n+S_n = (a_1+a_2+\cdots+a_n)+(a_n+a_{n-1}+\cdots+a_1) $
左辺は $2S_n$ です。右辺は、①の第$k$項($k=1,2,\ldots,n$)である $a_k$ と、②の第$k$項である $a_{n+1-k}$ を、同じ位置(縦の並び)どうし足し合わせたものとみなせます。実際、②の第$k$項は、末項 $a_n$ から数えて$k$番目の項なので $a_{n-(k-1)}=a_{n+1-k}$ です。したがって、
$ 2S_n = \sum_{k=1}^{n} \bigl(a_k+a_{n+1-k}\bigr) $
ステップ4:各項の和 $a_k+a_{n+1-k}$ を計算する
この和の中身 $a_k+a_{n+1-k}$ を、一般項の公式 $a_m=a_1+(m-1)d$ を使って具体的に計算します。
$ a_k = a_1+(k-1)d $
$ a_{n+1-k} = a_1+\bigl\{(n+1-k)-1\bigr\}d = a_1+(n-k)d $
この2つを足し合わせます。
$ a_k+a_{n+1-k} = \bigl\{a_1+(k-1)d\bigr\}+\bigl\{a_1+(n-k)d\bigr\} = 2a_1+\bigl\{(k-1)+(n-k)\bigr\}d $
かっこの中を計算すると、$(k-1)+(n-k)=k-1+n-k=n-1$ となり、$k$ が消えてしまいます。
$ a_k+a_{n+1-k} = 2a_1+(n-1)d $
これは $k$ の値(つまり、どの項とどの項を組にしたか)にまったく関係のない、一定の値になっています。これが、ステップ1の具体例で「縦に並んだどの組も和が一定($11$)になる」と観察した現象の、一般的な理由です。
ステップ5:一定の値を $n$ 個足し合わせる
ステップ3の和は、$k=1$ から $k=n$ まで、$n$ 個の項からなる和でした。ステップ4より、そのどの項も同じ値 $2a_1+(n-1)d$ になることが分かったので、この和は「同じ値を$n$回足す」という単純な計算になります。
$ 2S_n = \sum_{k=1}^{n} \bigl(2a_1+(n-1)d\bigr) = \underbrace{\bigl(2a_1+(n-1)d\bigr)+\cdots+\bigl(2a_1+(n-1)d\bigr)}_{n\text{個}} = n\bigl(2a_1+(n-1)d\bigr) $
ステップ6:両辺を2で割る
両辺を$2$で割ります。
$ S_n = \frac{n}{2}\bigl(2a_1+(n-1)d\bigr) = \frac{n}{2}\{2a_1+(n-1)d\} $
これで、公差 $d$ を使った形の公式が証明できました。
ステップ7:末項 $a_n$ を使った形に書きかえる
最後に、この式を末項 $a_n$ を使った形に書きかえます。一般項の公式より $a_n=a_1+(n-1)d$、すなわち $(n-1)d=a_n-a_1$ なので、ステップ6の式の中の $2a_1+(n-1)d$ に、この関係を代入します。
$ 2a_1+(n-1)d = 2a_1+(a_n-a_1) = a_1+a_n $
したがって、
$ S_n = \frac{n}{2}(a_1+a_n) $
が得られます。以上で、等差数列の和の2通りの公式
$ S_n = \frac{n}{2}(a_1+a_n) = \frac{n}{2}\{2a_1+(n-1)d\} $
がどちらも証明されました。
この証明のポイント
「和を逆順に並べ替えてから辺々足し合わせる」という操作によって、各項が持っていた「初項からの位置」の違い($k$ の違い)が、たし算の中で完全に打ち消し合い、すべての組が同じ値になる、というのがこの証明のいちばんのポイントです。この「対称な組み合わせを作って一定値にする」という発想は、等差数列の和だけでなく、数列の和を工夫して求める他の場面(例えば、対称性を持つ数の和を求める問題)でもたびたび登場する重要な考え方です。