公式の証明・導出

Σの線形性(和・定数倍の性質)の証明

関連単元: 数学B 数列

証明する内容

数列 $\{a_k\}$、$\{b_k\}$ と、$k$ に関係のない定数 $c$ について、次の2つの等式が成り立つことを証明します。

性質1(和を分ける)

$ \sum_{k=1}^{n} (a_k+b_k) = \sum_{k=1}^{n} a_k + \sum_{k=1}^{n} b_k $

性質2(定数倍を前に出す)

$ \sum_{k=1}^{n} c\,a_k = c\sum_{k=1}^{n} a_k $

この2つをあわせて、$\Sigma$の線形性と呼びます。証明の方針は難しいものではなく、$\Sigma$という記号の意味(定義)に戻って、両辺を実際に「足し算の形」に展開し、その2つの式が同じものであることを確認する、という素直なものです。

証明

ステップ1:$\Sigma$の定義を確認する

$\Sigma$ の記号は、次のように定義されています。数列 $\{c_k\}$ について、

$ \sum_{k=1}^{n} c_k = c_1+c_2+c_3+\cdots+c_n $

つまり、「$k$に $1$ から $n$ までの整数を順番に代入した値を、すべて足し合わせる」というのが $\Sigma$ の意味です。この定義を、性質1・性質2それぞれの証明で使います。

ステップ2:性質1(和を分ける)を証明する

証明したい式の左辺 $\displaystyle\sum_{k=1}^{n} (a_k+b_k)$ を、$\Sigma$の定義に従って展開します。これは、数列 $\{a_k+b_k\}$ について、$k=1$ から $n$ まで代入した値をすべて足すという意味なので、

$ \sum_{k=1}^{n} (a_k+b_k) = (a_1+b_1)+(a_2+b_2)+(a_3+b_3)+\cdots+(a_n+b_n) $

と書き下せます。右辺には、$n$個のかっこがあり、それぞれのかっこの中に $a_k$ の形の項が1つ、$b_k$ の形の項が1つ、合計 $2n$個の項が並んでいます。ここで、かっこを外し、足し算の順序を並べ替えます(足し算はどんな順序で計算しても結果が変わらない、という交換法則・結合法則を使います)。具体的には、$a$ の付いた項をすべて先に、$b$ の付いた項をすべて後にまとめて並べ直します。

$ (a_1+b_1)+(a_2+b_2)+\cdots+(a_n+b_n) = (a_1+a_2+\cdots+a_n)+(b_1+b_2+\cdots+b_n) $

(左辺・右辺のどちらも、$a_1,a_2,\ldots,a_n,b_1,b_2,\ldots,b_n$ という同じ $2n$個の数を、並べる順序だけを変えて足し合わせたものなので、値は変わりません。)

右辺の2つのかっこは、それぞれ $\Sigma$ の定義そのものの形をしているので、$\Sigma$ の記号を使って書き戻すことができます。

$ (a_1+a_2+\cdots+a_n)+(b_1+b_2+\cdots+b_n) = \sum_{k=1}^{n} a_k + \sum_{k=1}^{n} b_k $

以上をまとめると、

$ \sum_{k=1}^{n} (a_k+b_k) = \sum_{k=1}^{n} a_k + \sum_{k=1}^{n} b_k $

が示されました。

ステップ3:性質2(定数倍を前に出す)を証明する

同じように、証明したい式の左辺 $\displaystyle\sum_{k=1}^{n} c\,a_k$ を、$\Sigma$ の定義に従って展開します。これは、数列 $\{c\,a_k\}$ について、$k=1$ から $n$ まで代入した値をすべて足すという意味なので、

$ \sum_{k=1}^{n} c\,a_k = c\,a_1+c\,a_2+c\,a_3+\cdots+c\,a_n $

と書き下せます。右辺には、$n$個の項があり、そのどれにも共通する因数 $c$ が掛かっています。分配法則 $ca_1+ca_2=c(a_1+a_2)$ を、$n$個の項全体に繰り返し使うと、共通因数 $c$ をかっこの外にくくり出すことができます。

$ c\,a_1+c\,a_2+\cdots+c\,a_n = c\,(a_1+a_2+\cdots+a_n) $

かっこの中は、$\Sigma$ の定義そのものの形をしているので、$\Sigma$ の記号を使って書き戻します。

$ c\,(a_1+a_2+\cdots+a_n) = c\sum_{k=1}^{n} a_k $

以上をまとめると、

$ \sum_{k=1}^{n} c\,a_k = c\sum_{k=1}^{n} a_k $

が示されました。

ステップ4:2つの性質を組み合わせて使えることを確認する

性質1と性質2は、それぞれ単独で使えるだけでなく、組み合わせて使うこともできます。たとえば、$\Sigma(pa_k+qb_k)$($p,q$は定数)のような式は、まず性質1で和を分け、

$ \sum_{k=1}^{n} (p\,a_k+q\,b_k) = \sum_{k=1}^{n} p\,a_k + \sum_{k=1}^{n} q\,b_k $

次にそれぞれの項に性質2を使うことで、

$ = p\sum_{k=1}^{n} a_k + q\sum_{k=1}^{n} b_k $

という、実際の計算でよく使われる形にまで変形できます。この2つの性質さえ押さえておけば、$\Sigma$を含む複雑に見える式も、機械的に分解して計算できるようになります。

この証明のポイント

この証明でいちばん大切なのは、「$\Sigma$は、しょせんは足し算を短く書くための記号にすぎない」という事実に戻ることです。$\Sigma$の記号のまま式変形しようとすると難しく感じますが、いったん定義通りに全部書き下してしまえば、あとは中学校で習った分配法則や、足し算の順序を入れ替えてよいという性質(交換法則・結合法則)だけで証明が完成します。この「記号の意味に戻って考える」という姿勢は、$\Sigma$に限らず、極限記号 $\lim$ や積分記号 $\displaystyle\int$ など、新しい記号を学ぶときにいつでも使える基本姿勢です。