公式の証明・導出

3次関数のグラフの対称性(変曲点)の証明

関連単元: 数学II 微分・積分の考え

証明する内容

3次関数

$f(x) = ax^3+bx^2+cx+d \qquad (a\neq0)$

のグラフは、ある1点に関して点対称(その点を中心に$180°$回転させると、もとのグラフにぴったり重なる)になっています。その対称の中心となる点が、変曲点($f''(x)=0$となる点で、その点の前後でグラフの凹凸(曲がり方)が入れ替わる点)です。

変曲点の$x$座標を$p$とするとき、この証明では、

$f(p+t)+f(p-t) = (\text{$t$によらない一定の値})$

が、$t$にどんな値を代入しても成り立つことを示します。これが示せれば、変曲点$(p,f(p))$から等距離にある2点$x=p+t$、$x=p-t$での関数の値の平均が常に$f(p)$になる、つまりグラフが$(p,f(p))$に関して点対称であることが分かります。

証明

ステップ1:変曲点のx座標pを求める

$f(x)=ax^3+bx^2+cx+d$を2回微分します。

$f'(x) = 3ax^2+2bx+c, \qquad f''(x) = 6ax+2b$

変曲点の候補は、$f''(x)=0$となる$x$の値です。$f''(x)=6ax+2b$は$x$の1次式($a\neq0$より係数$6a$も$0$でない)なので、方程式$f''(x)=0$はただ1つの解をもちます。

$6ax+2b=0 \quad\Longrightarrow\quad x = -\frac{b}{3a}$

この解を$p=-\dfrac{b}{3a}$とおきます。$f''(x)=6ax+2b$は$x$の1次関数(傾き$6a\neq0$)なので、$x=p$の前後で符号が必ず変わります(1次関数のグラフは直線なので、$0$になる点の前後でかならず正から負、または負から正に切り替わるからです)。$f''(x)$の符号が変わるということは、$f(x)$の凹凸がそこで入れ替わるということなので、$x=p$は確かに変曲点の$x$座標です。

ステップ2:x=p+u とおいて f(x) を書き直す

$x=p+u$($u$は新しい変数、つまり$x$を変曲点からの位置$u$で測り直したもの)とおいて、$f(p+u)$を計算します。まず、$(p+u)^2$、$(p+u)^3$を展開します。

$(p+u)^2 = p^2+2pu+u^2, \qquad (p+u)^3 = p^3+3p^2u+3pu^2+u^3$

これらを使って、$f(p+u)=a(p+u)^3+b(p+u)^2+c(p+u)+d$を展開します。

$f(p+u) = a(p^3+3p^2u+3pu^2+u^3)+b(p^2+2pu+u^2)+c(p+u)+d$

$= ap^3+3ap^2u+3apu^2+au^3+bp^2+2bpu+bu^2+cp+cu+d$

これを、$u$の次数ごとに整理します。

$f(p+u) = au^3+(3ap+b)u^2+(3ap^2+2bp+c)u+(ap^3+bp^2+cp+d)$

最後の項$ap^3+bp^2+cp+d$は、$f(x)=ax^3+bx^2+cx+d$に$x=p$を代入した値そのもの、つまり$f(p)$です。

ステップ3:u²の係数が0になることを確かめる

$u^2$の係数は$3ap+b$でした。ここに、ステップ1で求めた$p=-\dfrac{b}{3a}$を代入すると、

$3ap+b = 3a\times\left(-\frac{b}{3a}\right)+b = -b+b = 0$

$u^2$の係数がちょうど$0$になることが確認できました(これは、$x=p$が変曲点である、つまり$f''(p)=0$であることと対応しています)。

ステップ4:f(p+u)を整理する

$u^1$の係数$3ap^2+2bp+c$は、$f'(x)=3ax^2+2bx+c$に$x=p$を代入した値、つまり$f'(p)$に等しいことに注意します。ステップ2、3の結果をまとめると、

$f(p+u) = au^3+f'(p)\,u+f(p) \quad \cdots ①$

という、とてもシンプルな形が得られました。ここで、右辺の$au^3+f'(p)u$の部分に注目します。$u$を$-u$に置き換えると、

$a(-u)^3+f'(p)(-u) = -au^3-f'(p)u = -\bigl(au^3+f'(p)u\bigr)$

となり、符号がちょうど反転します。つまり、$h(u):=au^3+f'(p)u$は奇関数($h(-u)=-h(u)$を満たす関数)です。①は、

$f(p+u) = h(u)+f(p) \qquad (h(u)=au^3+f'(p)u\text{は奇関数})$

と書けます。

ステップ5:f(p+t)+f(p-t) を計算する

①で$u=t$としたものと、$u=-t$としたものを、それぞれ考えます。

$f(p+t) = h(t)+f(p)$

$f(p-t) = h(-t)+f(p)$

$h$は奇関数なので$h(-t)=-h(t)$です。これを使って、2式を足します。

$f(p+t)+f(p-t) = \bigl\{h(t)+f(p)\bigr\}+\bigl\{-h(t)+f(p)\bigr\} = h(t)-h(t)+2f(p) = 2f(p)$

したがって、

$f(p+t)+f(p-t) = 2f(p)$

が、$t$にどんな値を代入しても成り立つことが証明できました。右辺の$2f(p)$は$t$を含まない定数です。

ステップ6:点対称であることの確認

$f(p+t)+f(p-t)=2f(p)$の両辺を$2$で割ると、

$\frac{f(p+t)+f(p-t)}{2} = f(p)$

これは、グラフ上の2点$\bigl(p+t,\ f(p+t)\bigr)$と$\bigl(p-t,\ f(p-t)\bigr)$を結んだ線分の中点の$y$座標が、$t$の値によらず常に$f(p)$になる、ということを意味しています。また、$x$座標についても、$\dfrac{(p+t)+(p-t)}{2}=p$なので、この中点の$x$座標も常に$p$です。

つまり、グラフ上のどこに2点$(p+t,f(p+t))$、$(p-t,f(p-t))$をとっても(変曲点から左右に同じ距離$|t|$だけ離れた2点をとっても)、その中点は必ず$(p,f(p))$になります。これはまさに、グラフが点$(p,f(p))$に関して点対称であることを意味しています。

ステップ7:検算

$f(x)=x^3-3x^2+2$($a=1,b=-3,c=0,d=2$)で確かめます。変曲点の$x$座標は、

$p = -\frac{b}{3a} = -\frac{-3}{3\times1} = 1$

$f(1)=1-3+0+2=0$なので、変曲点は$(1,0)$です。$f(p+t)+f(p-t)=2f(p)=0$となるはずなので、いくつかの$t$で確かめます。

$t=1$のとき:$f(2)=8-12+0+2=-2$、$f(0)=0-0+0+2=2$。和は$-2+2=0$。

$t=2$のとき:$f(3)=27-27+0+2=2$、$f(-1)=-1-3+0+2=-2$。和は$2+(-2)=0$。

どちらも和が$0(=2f(1))$になっており、確かに一致しています。

この証明のポイント

この証明のポイントは、$x=p+u$と置き換えて$f(x)$を$u$の式に書き直す(変曲点を新しい原点とみなす)ことで、$u^2$の項がちょうど消え、残りが「奇関数($au^3+f'(p)u$)+定数($f(p)$)」というきれいな形になる、という点です。奇関数は原点に関して点対称なグラフをもつので、それに定数$f(p)$を加えて$y$方向に平行移動したグラフは、点$(0,f(p))$、つまりもとの$x$座標でいえば$(p,f(p))$に関して点対称になります。この「注目したい点を新しい原点になるように文字を置き換え、式を整理し直す」という手法は、関数の対称性を調べるときに広く使える強力な道具です。