公式の証明・導出
log xの導関数が1/xになることの証明
関連単元: 数学III 微分法
証明する内容
$x>0$ において、自然対数関数 $f(x)=\log x$($e$を底とする対数)の導関数が、
$ \frac{d}{dx}\log x = \frac{1}{x} $
となることを証明します。証明の途中で、ネイピア数 $e$ の定義から導かれる重要な極限
$ \lim_{t\to0}\frac{\log(1+t)}{t} = 1 $
を使います。この極限自体についても、$e$ の定義に戻って簡潔に確認します。
証明
ステップ1:導関数の定義を書く
導関数の定義に戻って考えます。関数 $f(x)$ の導関数 $f'(x)$ は、極限を使って、
$ f'(x) = \lim_{h\to0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h} $
と定義されます。$f(x)=\log x$ を代入すると、
$ f'(x) = \lim_{h\to0}\frac{\log(x+h)-\log x}{h} $
を計算すればよいことになります。
ステップ2:対数の性質で、分子を1つの対数にまとめる
分子 $\log(x+h)-\log x$ に、対数の性質(商の対数 $\log M-\log N=\log\dfrac{M}{N}$)を使います。
$ \log(x+h)-\log x = \log\frac{x+h}{x} $
右辺の分数 $\dfrac{x+h}{x}$ を、$\dfrac{x}{x}+\dfrac{h}{x}=1+\dfrac{h}{x}$ と書き直すと、
$ \log(x+h)-\log x = \log\left(1+\frac{h}{x}\right) $
これをステップ1の式に代入します。
$ f'(x) = \lim_{h\to0}\frac{1}{h}\log\left(1+\frac{h}{x}\right) $
ステップ3:置換 $t=\dfrac{h}{x}$ を行う
分数の中の $\dfrac{h}{x}$ という形を、扱いやすくするために、新しい文字 $t=\dfrac{h}{x}$ で置き換えます。$x$ は($h\to0$ の極限をとる際に固定されている)$0$ でない定数なので、$h=xt$ と書き直せます。また、$x\neq0$ なので、$h\to0$ と $t\to0$ は同じことを意味します(片方が$0$に近づけば、もう片方も同じ速さの比率で$0$に近づきます)。
$h=xt$ を代入すると、
$ \frac{1}{h}\log\left(1+\frac{h}{x}\right) = \frac{1}{xt}\log(1+t) = \frac{1}{x}\times\frac{\log(1+t)}{t} $
したがって、
$ f'(x) = \lim_{t\to0}\left[\frac{1}{x}\times\frac{\log(1+t)}{t}\right] = \frac{1}{x}\times\lim_{t\to0}\frac{\log(1+t)}{t} $
($\frac{1}{x}$ は $t$ に関係のない定数なので、極限の外に出しました。)これで、あとは $\displaystyle\lim_{t\to0}\frac{\log(1+t)}{t}$ という極限の値さえ分かれば、証明が完成します。
ステップ4:ネイピア数 $e$ の定義を確認する
ここで、ネイピア数 $e$ の定義に戻ります。$e$ は、次の極限として定義される定数でした。
$ e = \lim_{h\to0}(1+h)^{\frac{1}{h}} $
この定義で使われている文字 $h$ を、ここでは $t$ に置き換えて書いておきます(意味は変わりません)。
$ e = \lim_{t\to0}(1+t)^{\frac{1}{t}} $
ステップ5:$\displaystyle\lim_{t\to0}\dfrac{\log(1+t)}{t}=1$ を、$e$ の定義から導く
対数関数 $\log$ は、その定義域($正の実数全体$)で連続な関数です。連続な関数 $g$ については、極限と関数の順序を入れかえることができる、つまり $\displaystyle\lim_{t\to0}g\bigl(u(t)\bigr)=g\Bigl(\displaystyle\lim_{t\to0}u(t)\Bigr)$ が成り立つ、という性質があります。この性質を、$g=\log$、$u(t)=(1+t)^{1/t}$ として使うと、
$ \lim_{t\to0}\log\left((1+t)^{\frac{1}{t}}\right) = \log\left(\lim_{t\to0}(1+t)^{\frac{1}{t}}\right) = \log e = 1 $
(最後の等号は、自然対数の底が $e$ そのものであることから、$\log e=1$ となることを使いました。)
一方、左辺の $\log\left((1+t)^{1/t}\right)$ は、対数の性質(累乗の対数 $\log(M^k)=k\log M$)を使って、
$ \log\left((1+t)^{\frac{1}{t}}\right) = \frac{1}{t}\log(1+t) = \frac{\log(1+t)}{t} $
と書き直せます。この2つの計算結果をあわせると、
$ \lim_{t\to0}\frac{\log(1+t)}{t} = 1 $
が示されました。これで、$e$ の定義だけから、この重要な極限の値が確認できました。
ステップ6:結果をステップ3の式に代入する
ステップ5で求めた $\displaystyle\lim_{t\to0}\frac{\log(1+t)}{t}=1$ を、ステップ3の式に代入します。
$ f'(x) = \frac{1}{x}\times\lim_{t\to0}\frac{\log(1+t)}{t} = \frac{1}{x}\times1 = \frac{1}{x} $
以上より、
$ \frac{d}{dx}\log x = \frac{1}{x} \quad (x>0) $
が証明されました。
この証明のポイント
この証明でいちばん技巧的な部分は、ステップ3の置換 $t=\dfrac{h}{x}$ です。この置換によって、$x$ という定数と、$h\to0$ の極限そのものの計算を分離することができ、極限の部分だけを $\displaystyle\lim_{t\to0}\dfrac{\log(1+t)}{t}$ という、$x$ に依存しない普遍的な形にまとめることができました。また、ステップ5で示したように、この普遍的な極限の値が $1$ になる理由は、結局のところネイピア数 $e$ の定義 $e=\displaystyle\lim_{t\to0}(1+t)^{1/t}$ そのものに、対数関数の連続性(極限と関数の順序を入れかえられる性質)を組み合わせただけで説明できます。つまり、「$e$ を底とする対数の導関数が、きれいな形 $\dfrac{1}{x}$ になる」という事実は、$e$ という数が、まさにそうなるように、この極限の値としてわざわざ定義されていることの直接的な帰結なのです。