公式の証明・導出

曲線の長さの公式の導出

関連単元: 数学III 積分法

証明する内容

区間 $a\leq x\leq b$ で定義された、なめらかな(導関数 $f'(x)$ が連続な)曲線 $y=f(x)$ の長さ $L$ を求める公式が、

$ L = \int_a^b \sqrt{1+\{f'(x)\}^2}\,dx $

となることを証明します。曲線の「長さ」とは、その曲線に沿って端から端まで実際に測った道のりの長さのことです。この証明では、曲線を細かく折れ線(たくさんの短い線分をつなげたもの)で近似し、その折れ線の長さの極限として、この積分の公式を導きます。

証明

ステップ1:区間を$n$等分し、折れ線で曲線を近似する

区間 $[a,b]$ を、$n$個の小さな区間に等分します。分割の幅を

$ \Delta x = \frac{b-a}{n} $

とし、分割点を $x_0=a,\ x_1=a+\Delta x,\ x_2=a+2\Delta x,\ \ldots,\ x_n=a+n\Delta x=b$ とします。曲線 $y=f(x)$ 上に、これらの $x$座標に対応する点 $P_k=\bigl(x_k,\ f(x_k)\bigr)$($k=0,1,\ldots,n$)をとり、隣り合う点どうしを線分で結んでいきます。こうしてできる、$n$本の線分をつなげた折れ線 $P_0P_1P_2\cdots P_n$ は、$n$を大きくするほど(分割を細かくするほど)、もとの曲線にどんどん近い形になっていきます。

曲線の長さ $L$ とは、この折れ線の長さが、$n\to\infty$(分割を限りなく細かくする)としたときに近づいていく値のことである、と考えます。したがって、この折れ線の長さを計算し、その極限を求めれば、曲線の長さが求まることになります。

ステップ2:1本の線分 $P_kP_{k+1}$ の長さを求める

折れ線を構成する$n$本の線分のうち、$k$番目の線分 $P_kP_{k+1}$ に注目します。この線分は、2点

$ P_k = \bigl(x_k,\ f(x_k)\bigr), \qquad P_{k+1} = \bigl(x_{k+1},\ f(x_{k+1})\bigr) $

を結ぶ線分です。この2点の $x$座標の差、$y$座標の差は、それぞれ、

$ x_{k+1}-x_k = \Delta x, \qquad f(x_{k+1})-f(x_k) $

なので、三平方の定理(2点間の距離の公式)より、線分 $P_kP_{k+1}$ の長さは、

$ P_kP_{k+1} = \sqrt{(\Delta x)^2+\bigl(f(x_{k+1})-f(x_k)\bigr)^2} $

です。

ステップ3:平均値の定理を使って、$y$座標の差を書きかえる

$f(x_{k+1})-f(x_k)$ の部分を、微分と関連づけるために書きかえます。$f$ は区間 $[x_k,x_{k+1}]$ で連続かつ微分可能なので、平均値の定理より、この区間の中に、

$ f(x_{k+1})-f(x_k) = f'(\xi_k)\,(x_{k+1}-x_k) = f'(\xi_k)\,\Delta x $

を満たす点 $\xi_k$($x_k<\xi_k

$ P_kP_{k+1} = \sqrt{(\Delta x)^2+\bigl(f'(\xi_k)\,\Delta x\bigr)^2} $

ステップ4:$(\Delta x)^2$ をくくり出す

根号の中から、共通因数 $(\Delta x)^2$ をくくり出します。

$ (\Delta x)^2+\bigl(f'(\xi_k)\bigr)^2(\Delta x)^2 = (\Delta x)^2\Bigl(1+\bigl\{f'(\xi_k)\bigr\}^2\Bigr) $

したがって、

$ P_kP_{k+1} = \sqrt{(\Delta x)^2\Bigl(1+\{f'(\xi_k)\}^2\Bigr)} = |\Delta x|\,\sqrt{1+\{f'(\xi_k)\}^2} $

いま、$a0$ であり、$|\Delta x|=\Delta x$ です。したがって、

$ P_kP_{k+1} = \sqrt{1+\{f'(\xi_k)\}^2}\ \Delta x $

という、線分 $P_kP_{k+1}$ の長さの正確な式が得られました。

ステップ5:すべての線分の長さを足し合わせる

折れ線 $P_0P_1\cdots P_n$ の全体の長さ $L_n$ は、$n$本の線分の長さをすべて足し合わせたものです。

$ L_n = \sum_{k=0}^{n-1} P_kP_{k+1} = \sum_{k=0}^{n-1} \sqrt{1+\{f'(\xi_k)\}^2}\ \Delta x $

この式の形をよく見ると、関数 $g(x)=\sqrt{1+\{f'(x)\}^2}$ について、各小区間 $[x_k,x_{k+1}]$ の中の点 $\xi_k$ における値 $g(\xi_k)$ に、区間の幅 $\Delta x$ をかけたものを、$k=0$ から $n-1$ まで足し合わせた式になっています。これは、定積分を定義するときに使うリーマン和、そのものの形です。

ステップ6:$n\to\infty$ の極限をとり、定積分に結びつける

定積分は、まさにこの「リーマン和の、分割を限りなく細かくしたときの極限」として定義されるのでした。$f'(x)$ が連続であるという仮定から $g(x)=\sqrt{1+\{f'(x)\}^2}$ も連続な関数になり、連続な関数のリーマン和は、分割を細かくする($n\to\infty$、すなわち $\Delta x\to0$)と、各小区間内のどの点 $\xi_k$ を選んでいたかによらず、ただ1つの値である定積分に収束することが知られています。したがって、

$ \lim_{n\to\infty} L_n = \lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n-1} g(\xi_k)\,\Delta x = \int_a^b g(x)\,dx = \int_a^b \sqrt{1+\{f'(x)\}^2}\,dx $

一方、ステップ1で確認したように、折れ線の長さ $L_n$ は、$n\to\infty$ とすると曲線の長さ $L$ そのものに近づいていくのでした。したがって、

$ L = \lim_{n\to\infty} L_n = \int_a^b \sqrt{1+\{f'(x)\}^2}\,dx $

これで、曲線の長さの公式が証明されました。

ステップ7:媒介変数表示の場合への拡張(補足)

曲線が媒介変数表示 $x=x(t)$、$y=y(t)$($t_1\leq t\leq t_2$)で与えられている場合も、まったく同じ考え方が使えます。小さな線分の長さは、

$ \sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2} = \sqrt{\left(\frac{\Delta x}{\Delta t}\right)^2+\left(\frac{\Delta y}{\Delta t}\right)^2}\ \Delta t $

と変形でき、$\Delta t\to0$ のとき $\dfrac{\Delta x}{\Delta t}\to x'(t)$、$\dfrac{\Delta y}{\Delta t}\to y'(t)$ となることから、同じ手順(リーマン和の極限)によって、

$ L = \int_{t_1}^{t_2} \sqrt{\{x'(t)\}^2+\{y'(t)\}^2}\,dt $

という公式が得られます。

この証明のポイント

この証明のいちばんの要点は、「曲線の長さ」という、そのままでは扱いにくい量を、まず折れ線の長さ(有限個の線分の和)という扱いやすい量で近似し、その近似の精度を上げていく(分割を細かくする)極限として定義し直した点にあります。この「まず有限個に分割して近似し、分割を細かくする極限を考える」という発想こそが、定積分という概念そのものの成り立ち(リーマン和の極限)と完全に一致しています。だからこそ、曲線の長さを求める問題が、最終的には定積分の計算に帰着するのです。この「複雑な量を、微小な部分に分割して三平方の定理などの基本的な道具で近似し、それを足し合わせて極限をとる」という考え方は、面積や体積、仕事量など、積分を応用するほとんどすべての場面に共通する、積分法の根本的な考え方です。