公式の証明・導出
判別式と2次関数のグラフの共有点の個数の関係の証明
関連単元: 数学I 二次関数
証明する内容
$a\neq0$ とし、2次関数
$ y = ax^2+bx+c $
のグラフ(放物線)と、$x$軸との共有点の個数について考えます。判別式を
$ D = b^2-4ac $
と定義するとき、次の対応関係が成り立つことを証明します。
- $D>0$ のとき、グラフと$x$軸の共有点は2個
- $D=0$ のとき、グラフと$x$軸の共有点は1個
- $D<0$ のとき、グラフと$x$軸の共有点は0個
証明
ステップ1:「共有点」を求める問題を、方程式を解く問題に言い換える
まず、「2次関数のグラフと$x$軸の共有点」とは何かを、正確に確認しておきます。$x$軸とは、$y=0$ を満たす点の集まり(直線)のことです。したがって、点 $(x_0,\ 0)$ が、グラフ $y=ax^2+bx+c$ 上にあり、かつ$x$軸上にもある(つまり共有点である)ためには、$x=x_0$ を代入したときに $y=0$ となること、すなわち、
$ a{x_0}^2+bx_0+c = 0 $
が成り立つことが必要十分です。逆に、この等式を満たす実数 $x_0$ があれば、点 $(x_0,\ 0)$ は必ずグラフと$x$軸の共有点になります。
つまり、「グラフと$x$軸の共有点の個数」を求めることは、2次方程式
$ ax^2+bx+c = 0 \quad \cdots (\ast) $
の異なる実数解の個数を求めることと、完全に同じ問題に置き換えられます。そこで、以下では方程式 $(\ast)$ の実数解の個数を調べていきます。
ステップ2:平方完成によって、方程式 $(\ast)$ を解く
$(\ast)$ を、平方完成の手順で変形していきます。$a\neq0$ なので、両辺を $a$ で割ります。
$ x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a} = 0 $
定数項 $\dfrac{c}{a}$ を右辺に移項します。
$ x^2+\frac{b}{a}x = -\frac{c}{a} $
左辺を平方完成します。$x$ の係数 $\dfrac{b}{a}$ の半分である $\dfrac{b}{2a}$ を使うと、
$ x^2+\frac{b}{a}x = \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{b}{2a}\right)^2 = \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2}{4a^2} $
という変形ができるので、これをもとの式に代入すると、
$ \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2}{4a^2} = -\frac{c}{a} $
$-\dfrac{b^2}{4a^2}$ を右辺に移項します。
$ \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2 = \frac{b^2}{4a^2}-\frac{c}{a} $
右辺を、分母を $4a^2$ にそろえて1つの分数にまとめます。$\dfrac{c}{a}=\dfrac{4ac}{4a^2}$ なので、
$ \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2 = \frac{b^2-4ac}{4a^2} $
ここで、右辺の分子 $b^2-4ac$ が、まさに判別式 $D$ です。この式を、判別式を使って書き直します。
$ \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2 = \frac{D}{4a^2} \quad \cdots (\ast\ast) $
ステップ3:$(\ast\ast)$ の右辺の符号によって、場合を分ける
$(\ast\ast)$ の右辺 $\dfrac{D}{4a^2}$ に注目します。分母の $4a^2$ は、$a\neq0$ より $a^2>0$、したがって $4a^2>0$ です。分母が正の数なので、この分数全体の符号は、分子である $D$ の符号だけで決まります。左辺 $\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2$ は、実数の2乗なので、常に $0$以上の値です。したがって、$(\ast\ast)$ が実数解 $x$ を持つかどうかは、右辺 $\dfrac{D}{4a^2}$ が「正・零・負」のどれであるかによって、次のように場合分けされます。
場合1:$D>0$ のとき(共有点2個)
$D>0$ のとき、$4a^2>0$ と合わせて $\dfrac{D}{4a^2}>0$ です。したがって、$(\ast\ast)$ の両辺の平方根を考えることができ、
$ x+\frac{b}{2a} = \pm\sqrt{\frac{D}{4a^2}} = \pm\frac{\sqrt{D}}{2a} $
(ここで $\sqrt{4a^2}=2|a|$ ですが、$\pm$ が付いているため符号の選択は $\pm\dfrac{\sqrt D}{2|a|}$ とまとめても $\pm\dfrac{\sqrt D}{2a}$ とまとめても同じ2つの値を表すことに変わりはありません。通常は $\pm\dfrac{\sqrt D}{2a}$ の形で扱います。)
$D>0$ なので $\sqrt{D}$ は $0$ でない実数であり、複号 $\pm$ から、
$ x = -\frac{b}{2a}+\frac{\sqrt{D}}{2a}, \qquad x = -\frac{b}{2a}-\frac{\sqrt{D}}{2a} $
という、互いに異なる2つの実数解が得られます(2つの値の差が $\dfrac{2\sqrt{D}}{2a}=\dfrac{\sqrt D}{a}\neq0$ なので、確かに異なる値です)。これらをまとめると、おなじみの解の公式
$ x = \frac{-b\pm\sqrt{D}}{2a} = \frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a} $
になります。したがって、方程式 $(\ast)$ は異なる2つの実数解を持ち、ステップ1の言い換えにより、グラフと$x$軸の共有点は2個です。
場合2:$D=0$ のとき(共有点1個)
$D=0$ のとき、$(\ast\ast)$ の右辺は $\dfrac{D}{4a^2}=\dfrac{0}{4a^2}=0$ になります。したがって、
$ \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2 = 0 $
実数の2乗が $0$ になるのは、その実数自身が $0$ のときに限られるので、
$ x+\frac{b}{2a} = 0 \quad \Longrightarrow \quad x = -\frac{b}{2a} $
という、ただ1つの実数解(重解)が得られます。したがって、方程式 $(\ast)$ の実数解はこの1つだけであり、グラフと$x$軸の共有点は1個です(グラフの立場から見ると、放物線の頂点がちょうど$x$軸上に乗っている状態で、$x$軸に接している状況にあたります)。
場合3:$D<0$ のとき(共有点0個)
$D<0$ のとき、$4a^2>0$ と合わせて $\dfrac{D}{4a^2}<0$ です。したがって、$(\ast\ast)$ は、
$ \left(x+\frac{b}{2a}\right)^2 = (\text{負の数}) $
という形になります。ところが、左辺 $\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2$ は、実数 $x$ をどんな値にしても、実数の2乗である以上、必ず$0$以上の値にしかなりません。$0$以上の値が負の数に等しくなることはあり得ないので、この等式を満たす実数 $x$ は存在しません。したがって、方程式 $(\ast)$ は実数解を持たず、グラフと$x$軸の共有点は0個です。
ステップ4:3つの場合をまとめる
以上、場合1・2・3から、判別式 $D=b^2-4ac$ の符号と、2次関数のグラフと$x$軸の共有点の個数との対応関係が、次のようにすべて示されました。
| 判別式の符号 | 方程式 $ax^2+bx+c=0$ の実数解 | グラフと$x$軸の共有点 |
|---|---|---|
| $D>0$ | 異なる2つの実数解 | 2個 |
| $D=0$ | 1つの実数解(重解) | 1個 |
| $D<0$ | 実数解なし | 0個 |
この証明のポイント
この証明の中心は、「$x$軸との共有点を求める」という図形の問題を、「方程式を解く」という代数の問題にまず言い換え、さらにその方程式を平方完成によって $(\text{実数})^2=(\text{ある数})$ という形に持ち込む、という2段階の言い換えです。この形に持ち込みさえすれば、あとは「実数の2乗は常に$0$以上である」という、ただ1つの単純な事実だけから、正・零・負の3つの場合すべての結論が、機械的に導かれます。この「平方完成によって、実数解の有無を『2乗が0以上』という事実だけで判定できる形に持ち込む」という発想は、2次方程式・2次不等式が絡む多くの問題(最大最小問題や、2次不等式が常に成り立つ条件を求める問題など)に共通して使われる、非常に汎用性の高いテクニックです。